パレスチナ革命に身を投じた伝説的映画監督・足立正生が語る「テロと宗教と切腹集団“死のう団”」とは?

パレスチナ革命に身を投じた伝説的映画監督・足立正生が語る「テロと宗教と切腹集団死のう団」とは?の画像5c2015「断食芸人」製作委員会

■日本の歴史と切腹集団“死のう団”

――あの、切腹する集団は何を意味してたんですか?

足立 ああ「死のう団」。あれが日本の歴史の中では非常に重要な事実で、日本が軍国主義に傾いて行くときに、神道以外は宗教禁止になっていって、信仰の自由っていうのも一切なくしていく。

 元々大本教系の人じゃないかと言われてるんだけど、彼等が怒ってそれこそみんなで断食を始めるんですよ。閉じこもって死者が出るぐらいのことをやった。それでアカ思想と、それを超える危険思想って言われる。それが第一期。

 第二期の人はね、少人数ではあるけれど、ああいう風に団体で街頭に出て行って「死のう!死のう!」ってパフォーマンスをやったんですよ。それをやってる。

――ちょっと「ええじゃないか」っぽくもあったんですけど。

足立 そうそう。その逆をいってるのね。メッセージ的にしてることは「ええじゃないか」と同じで「みんな死のう!」って言ってまわるわけね。死のう団の第一期っていうのはそれぐらいの重要な思想の問題であり、政治の問題であり信仰の問題であったから。

――あと、ものすごい人いるじゃないですか。吉増剛造さんですか?あっけにとられましたよ。「なんだこの人は」って。

足立 あの人はね、吉本隆明とかが褒めた詩人は日本に3人しかいないんだけど、そのうちの一番褒められた人であり、現代詩で文化勲章もらったのはこの人しかいない。

 この人は古代史とかを勉強していて、全国に自分の作った詩の朗読会を、もう10何年続けてる人。それも大きなホールとかそういうのではなくてね。

 僕も知り合ったんで、「実はこういう映画を撮る」って言ったら、魯迅の専門家でもあって、映画の撮影する前日まで北京大学で講義をして帰ってきて、そのまま宇都宮にきて、3つぐらいある自作の詩シーンのうちの1つを選んで、それで詩を読みましょうと。

――あのスタイルで全国をまわってるんですか?

足立 そうそう。

――ものすごいですね!

足立 日頃発表する詩にファンもいるけれども、詩の朗読会っていうと待っている人たちがいるんだよ。

――あのシーンは終わったあと、そこにいる人たちが本当にそれに感動している感じがありました。あのシーンは異質な感じがして。何だか全然わかんないし、何言ってるかわかんないし、でもなんかものすごいし。ものすごい圧倒的なものがあって衝撃的でした。あと何か咥えてチリンチリン鳴らしてるじゃないですか。

足立 あれは、サヌカイト。讃岐の石で、今あんまりとれない。あの音の響きが彼は好きでね。詩の朗読をやるときにいつも咥えてぶらさげて鳴らしてる。

 それから、あの金槌はね、日本最初の反建築の素晴らしい建築家がいたんだけど、その人が彼に形見分けをしたもの。その金槌でなんでも叩いて響きを聞いて、日本の言霊がどう響いてくるのかっていうのをやっている。

 宇都宮の商店街がアーケードでドームになってて、そこにセットを組み込んだでしょ。そこの道路を叩いて「ああ、こんないい響きが」って、その響きが気にいってね。激烈な朗読の仕方をして、普段それをしないように抑えてるみたなんだけど「ああ~、やっちゃった~」って(笑)。でも、喜んでくれましたよ。

――そういうものすごいシーンというのがポンポン入ってくるんですが、今回の映画は根底に流れているものがわかりやすいと思うんです。でも、足立監督の作品を初めて観る人には、やっぱり難しい感じはすると思うんですけど。

足立 そお?初めて観る人は、あの難しい映画を撮る足立じゃなくて、わかりやすい画(え)を観てくれるんじゃないかと期待しているんだけどもね。

――初めて足立監督の映画を観た人が、どう感じるのか反応が面白そうですよね。早く公開した方がいいですよ(笑)。

足立 (笑)ちゃんと32の映画館で上映が決まってるよ。配給会社の太秦さんも「最低50は」と言ってるしね(笑)。

――全国ですか?

足立 そうそう。だから私もやるところにいって舞台挨拶とか冗談言わないといけない(笑)。ドサ回りだね(笑)。

――いいじゃないですか。赤Pみたいで。

足立 そうそう、上映してまわってるつもりになるよ。


※インタビュー第3回に続く


■「断食芸人」
公式ホームページ https://danjikigeinin.wordpress.com
2月27日より渋谷ユーロスペースを皮切りに、全国32カ所で上映。

■足立正生
1939年生まれ。日本大学芸術学部映画学科在学中に自主制作した『鎖陰』で一躍脚光を浴びる。大学中退後、若松孝二の独立プロダクションに加わり、性と革命を主題にした前衛的なピンク映画の脚本を量産する。監督としても1966年に『堕胎』で商業デビュー。
1971年にカンヌ映画祭の帰路、故若松孝二監督とパレスチナへ渡り、パレスチナ解放人民戦線のゲリラ隊に加わり共闘しつつ、パレスチナゲリラの日常を描いた『赤軍-PFLP・世界戦争宣言』を撮影・製作。
1974年重信房子率いる日本赤軍に合流、国際指名手配される。1997年にはレバノン・ルミエ刑務所にて逮捕抑留。2000年3月刑期満了、身柄を日本へ強制送還。
2006年、赤軍メンバーの岡本公三をモデルに描いた『幽閉者 テロリスト』で35年ぶりにメガホンを取り、日本での創作活動を再開。そして今年、足立正生監督復帰2作目がこの「断食芸人」だ。

■取材・文=ISHIYA
JAPANESE HARD CORE PUNKバンド FORWARDのボーカルでありフリーライター。
REAL SOUND」「INDIES INFO 連載コラム」「PUNK ROCK ISSUE BOLLOCKS 連載コラム」「SUUMOジャーナル」「土木建築系総合カルチャーマガジン『BLUES’ MAGAZINE』」で執筆中。

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