1300万円の巨大キノコ、15キロのエビフライ…写真史上最も変わったレンズ5選!

■人間の眼を超えた!キューブリック監督も切望した世界一明るいレンズ Carl Zeiss Planar 50mm f/0.7

1300万円の巨大キノコ、15キロのエビフライ…写真史上最も変わったレンズ5選!の画像3画像は「PetaPixel」より。

 F値はそのレンズの明るさを示す指標である。小難しい話は割愛するとして、F値の数が小さいほど一度に取り込める光量が多くなり、速いシャッターを切れるというわけだ。我々人間の眼はF値1.0である。その1.0を超える明るさのレンズが1966年のフォトキナで発表された。今でもそんな明るさのレンズは販売されていないというのに、当時の科学者たちの努力には脱帽である。

 この「プラナー(Planar)50mm f/0.7」、実はNASAの依頼によって開発されたものなのだ。1968年12月21日発のアポロ8号による月面探査の際に当時の高感度フィルムでは月の暗部を撮影するのは不可能だった。その為にもっと明るいレンズを作れないか、という依頼からたった10本だけ製作されたのである。非常に条件の厳しいレンズだけあって、一番後群のレンズとフィルム面はたったの4ミリしかないという。

1300万円の巨大キノコ、15キロのエビフライ…写真史上最も変わったレンズ5選!の画像4
画像は「PetaPixel」より。


 実はこのレンズを切望した人物が他にもいた。それが18世紀のヨーロッパを舞台とした「バリー・リンドン」を撮影していたスタンリー・キューブリック監督である。監督はどうしても18世紀ならではの薄暗い世界観を作るために、ろうそくの明かりだけで撮影したいと考えていた。現在のデジタル技術があれば、高感度撮影も簡単であるが、当時の映画用フィルムでは無理な話だった。そこへNASAが依頼したこの「Planar 50mm f/0.7」の情報を耳にするのだ。

 これだ! と、監督はレンズを3本購入し、映画用に改造してあの素晴らしい「バリー・リンドン」の映像を撮影することに成功したのである。完璧主義者、キューブリック監督らしい話である。宇宙開発のために作られたレンズが、映画の世界で活躍するとはなんとも面白い話である。

■手持ち限界に挑む!シグマ 200-500mm F2.8 EX DG

1300万円の巨大キノコ、15キロのエビフライ…写真史上最も変わったレンズ5選!の画像5画像は「PetaPixel」より。

 シグマといえば、他社とは全く違ったイメージセンサーである「Foveon」を搭載した高解像度のカメラが有名であるが、アナログ写真時代からも、少々変わったレンズをたくさん作ってきている。望遠レンズなのに最小絞りが64まで設定でき、深い被写界深度を得られる「パンテル」シリーズや、いま見ても“とんでもスペック”な「MF135/1.8」など……。かなりチャレンジ精神旺盛なメーカーなのだ。

 筆者は、2008年に発売された、この大砲ともいえる「200-500mm f/2.8」を初めて実際に見た時、頭の中で「?」マークが無数に浮かんだのを覚えている。松田優作ばりに「なんじゃこりゃ!」と叫びたくなる衝動。「ズーム全域でF値が2.8で固定だと???」この驚きは写真をやっている者は皆感じたに違いない。そのインパクトある外観から、「エビフライ」や「Sigzooka」といったアダ名までつけられたこのレンズ、その重量15.7kg

 しかも、AF駆動させるためにレンズ本体にバッテリーを入れる必要があるというシグマらしさ。この大砲を三脚など使わずに手持ちで使うのが漢というものだ。是非筋トレ用として撮影してみたいものだ。都心でやればたちまち人だかりができること間違いない。

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