現代の秘境・奄美大島の“知られざる歴史”が身震いするレベル!犬食文化に赤ん坊の首切りも?


【3】大陸文化の影響

 奄美大島は距離といえる中国をはじめとする大陸文化の影響を受けており、お盆やお正月は旧暦で祝われるほどだ。お盆の時は、仏前に大量の品物を並べて先祖の霊を迎える。これは、朝鮮半島で行われている先祖供養の儀式チェサに近いものだろう。さらに赤ちゃんが産まれると首の後ろをカミソリで切り、血を出すことで、体に中の“悪いもの”を取り出す儀式も存在したという。

「私の子どもが産まれた時にもお母さんからやれといわれました。断りましたけどね」

 首切りの風習以外にも、お灸を据えて腹痛を治し、温めたガラスを押し付け、肩こりや腰痛を軽減するという吸玉も行われている。中国式の民間療法が本土以上に広く浸透しているのだ。

【4】奄美とキリスト教

 奄美大島は、カトリックの信徒が多い土地として知られる。信者は島の北部に多く、鐘が語源といわれる辺留(べる)、雪が語源といわれる須野(すの)といった地名もある。幕末期、奄美大島は精糖産業の近代化のため、長崎からオランダ人技術者が多数招いた。その際にキリスト教もやってきたのだろう。

 現在も、奄美大島にはオランダ人の血を引く人間が多く存在するという。さらに明治期に入ると、鹿児島からもキリスト教の布教者が多数訪れるようになる。当時の奄美大島には、神道はもちろん仏教もほとんど普及しておらず、土着的な民間信仰が主体であったため、近代的な宗教としてキリスト諸教派が入り込むことになった。彼らは、病院や学校建設など島のインフラ建設もになった。それだけ奄美大島は未開の地であったのだろう。


【5】薩摩への憎悪

 奄美大島は長らく、本土である薩摩藩の支配を受けてきた。江戸時代以降、奄美大島はサトウキビから精製される黒砂糖の供給地とされ、島の住民は過酷な労働を強いられた。そのため、薩摩に対する恨みは根深い。

「おばあちゃんの世代は、薩摩の人間とは絶対に結婚するなといわれていたようです。ですが、母親世代になると、『薩摩はお金持ちだからいい』と価値観が変わっていきました」

 さらに沖縄(琉球)への思いも複雑だ。奄美大島は琉球王国の支配を受けていた時代もあり、近年まで沖縄本島では奄美の人間をあからあさまに差別する習慣があったという。

 本土と沖縄という二重の差別が、薩摩でもなければ琉球でもないという奄美大島の立ち位置を作り出すことになったのだ。

 一通り、島の歴史を振り返ったところで、次回は現代になお残る驚きの奄美大島事情をお届けしたい。
(文=平田宏利)

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