体が勝手に踊り出して死ぬ「ハンチントン病」 ― 冥界へといざなう“絶望の舞踏”とは?

 1930~40年代に活躍したフォーク歌手、ウディ・ガスリー。貧困や差別といった労働者の悲哀を歌い、あのボブ・ディランにも多大な影響を与えた偉大なアーティストだ。1940年代後半に健康状態を悪化させてしまった彼は、1954年に「ハンチントン病」と診断され、それから13年後、1967年10月3日にニューヨーク市クイーンズ区のクリードムーア精神病院で死去した。

 このウディ・ガスリーの死因となったハンチントン病とは、別名「ハンチントン舞踏病」とも呼ばれる遺伝性の神経変性疾患のこと。症状として、不随意運動(勝手に体が動いてしまう目的のない運動)、精神疾患、認知障害などが見られる。個人差はあるが、病気の終末期になると食べ物が飲み込めなくなったり、会話や歩くことも困難になって死に至るという。


■逃げ場のない遺伝性疾患

体が勝手に踊り出して死ぬ「ハンチントン病」 ― 冥界へといざなう絶望の舞踏とは?の画像1画像は、「YouTube」より

 上述の通り、ハンチントン病は遺伝性の病だ。片方の親が発病した場合、子どもに遺伝する確率は約50%と言われている。遺伝子配列の一部が異常に長く繰り返されることで発症するため、親よりも子の方が重症になるようだ。しかし、遺伝子配列が長く繰り返される理由や、遺伝子に変化が起きる原因については未だ解明されていない。

 ハンチントン病は30~50歳にかけて発症することが多いが、まれに20歳未満の若年層にも現れる。この若年性ハンチントン病を発症すると、感情のコントロールや物事の判別がつかなくなり、重いうつ状態に陥り、自殺を図ることもある。ハンチントン病を発症した人は、“ハンチントン舞踏病”の呼び名のごとく、不随意運動を繰り返し、まるで踊っているかのような状態を示すのだ。

動画は、「YouTube」より

 ハンチントン病の有病率は、欧米人で1万5千人に1人、日本では15万人に1人といわれている。不随意運動や精神症状を和らげる薬はあるが、残念ながら完治させる術は見つかっていない。果たして、人類がハンチントン病の謎を解明できる日は訪れるのだろうか?
(文=北原大悟)

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