画像は、『H.R.GIGER(ギーガー)陰翳の廻廊』展@ヴァニラ画廊
H・R・ギーガーといえば映画『エイリアン』で知られる。その映画が、現在でもSFサスペンス映画の金字塔として、その地位を不動のものとしているのは、宇宙生命体のデザインを手掛けたギーガーの功績に負うところが大きい。彼が創造した“エイリアン”は人間とは全く異なる昆虫のような外骨格(骨が外側を覆ている)構造を持ち、グロテスクであると同時に独特のエロティシズムを感じさせる異様な生物であった。
1980年、ギーガーは『エイリアン』でアカデミー賞視覚効果賞を受賞。その後も、『エイリアン2』『DUNE』『スピーシーズ 種の起源』『帝都物語』にも参加。元XJAPANのhideのソロアルバム「HIDE YOUR FACE」のジャケットの仮面も手掛けた。その一方で、彼はシュルレアリスムを現代に継承する画家として、サルバドール・ダリからも一目おかれていた存在であった。
ギーガー・ミュージアム(撮影:ケロッピー前田)(C)GIGER MUSEUM
98年にはスイスのグリュイエールに自らの作品を所蔵する「ギーガー・ミュージアム」を設立。04年から05年にかけて、パリのアル・サン=ピエール美術館で大規模な回顧展が開催されるなど作家としての地道な活動を続けていた。晩年もたびたびの再評価の気運が高まり、アジア巡回の大規模展示のプランが進行している中、2014年5月、階段から転落、搬送先の病院にて死去。享年74歳、才能豊かな芸術家の人生としては早かった死である。
そんな偉大なるギーガーの再評価のきっかけとなるような展示会『H.R.GIGER(ギーガー)陰翳の廻廊』展が、東京・銀座のヴァニラ画廊で開催される。この展示は、日本のコレクター、Gallery Luciferが蒐集した貴重な初期作品を中心としたものである。
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Gallery Luciferのこだわりのコレクションは、ギーガーのシュルレアリスム画家としての原点や、さまざまなクリーチャーデザインのイメージの始まりを、映画『エイリアン』以前の初期作品に求めているという。今回の展示の企画を進めてきたヴァニラ画廊のディレクター大沼瞳氏に話を聞いた。
――Gallery Luciferさんとはどんな方でしょうか?
大沼「シュルレアリスムに造詣が深い個人の蒐集家です。2016年1月、ヴァニラ画廊で『象徴の幻視とイマージュの遊泳者』という展示で、フリードリッヒ・シュレッダー=ゾンネンシュターン、ハンス・ベルメール、ウニカ・チュルンという3人のシュルレアリスムの作家を紹介する際、作品をお借りしたのがご縁となりました」