アジソン病 ― ホラー映画を観ただけで死ぬかもしれない奇病
普段何気なく生活をしていても、突如死に至るかもしれない。そんな恐怖を抱えて生きているのが、“アジソン病”を患った少女、ジェニファー・ロイドだ。アジソン病とは、副腎皮質ステロイドの産生が低下する症候群のことをいう。
簡単に言うと、副腎から分泌されるアドレナリンを作ることができず、少しのショックやストレスを受けただけでも臓器の機能が停止してしまう病気のこと。彼女はショック状態に陥ると、迅速な治療を受けなければ嘔吐をもよおし、意識を失い、最悪死に至ってしまう。極端な話をすれば、ホラー映画を観ただけでも命を落とす危険があるのだ。
ジェニファーが抱えるアジソン病は学校生活にも支障をきたす。試験期間中は非常にストレスが溜まるため、1時間机に向かったら、2時間の休憩が必要になる。そのため、他の生徒より数週間前から試験の準備を始めなければならない。彼女には児童心理学者になりたいという夢があるのだが、「この病気のために試験勉強をするのがとても難しい」と語っている。
アジソン病には先天性と後天性のものがあるが、その症例のほとんどは後天性のもの。しかしジェニファーは、これまでにたった数十件しか報告されていない先天性によるものだ。ジェニファーがアジソン病を患っていると判明したのは7歳のころ。それ以来、彼女の母親は常にジェニファーから目を離さずに過ごしてきた。
ジェニファーが大好きな映画「ハリーポッター」に大きなクモが出てくるシーンがあれば、そのクモが本物ではないことを言い聞かせて彼女を安心させてきた。母親はジェニファーについて、「彼女はアジソン病との付き合い方について、多くのことを学んできたの。そんな娘を本当に誇りに思うわ」と語っている。
1855年にイギリスの内科医、トーマス・アジソンが発見したアジソン病。治療法は、ステロイドホルモンの補充となるが、副腎皮質の機能不全は基本的に回復することがなく、一度治療したら一生薬を飲み続けなくてはならない。少しのショックでも死に至る可能性のあるアジソン病との付き合い方を見つけた彼女の、児童心理学者という夢がいつの日か叶うことを願いたい。
(文=山下史郎)
参考:「Daily Mail」、ほか
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