オスと引き離されたメスザメ、単独で子どもを産める体に変化! 理学博士が緊急解説「生殖に関わらないオスは、もはやコスト」

――科学分野だけではなく、オカルト・不思議分野にも造詣が深い理学博士X氏が、世の中の仰天最新生物ニュースに答えるシリーズ

 夫がいなくなって数年、独り身かつ男の影もなかったはずの妻に、なぜか子どもが生まれた――。そんな奇妙な現象がオーストラリアで確認された。もちろん、人間の話ではない。「トラフザメ」というサメの一種の話だ。英国の科学ニュースサイト「New Scientist」が報じた。

オスと引き離されたメスザメ、単独で子どもを産める体に変化! 理学博士が緊急解説「生殖に関わらないオスは、もはやコスト」の画像1トラフザメ 画像は「Wikipedia」より引用


■超レアケース! メスが単為生殖に変化

 今回、単為生殖(有性生殖する生物のメスが単独で子を作る現象)を行ったことが確認されたのは、オーストラリアのクイーンズランド州にある「リーフHQ水族館」で飼育されているメスのトラフザメ(Stegostoma fasciatum)だ。トラフザメはインド太平洋全域のサンゴ礁に生息し、絶滅の恐れも指摘されている危急種の一種である。

 話題となっているメス「レオニー」は、1999年に捕獲された野生のトラフザメだ。2008~2012年にかけてオスのトラフザメと同じ水槽で飼育され、何度か産卵し、計24匹の子どもが生まれている。そして2012年、オスが別の水槽へと移されて以降、レオニーは娘にあたるメスと同じ水槽で飼育されていた。しかし2014年、母子ともに産卵が確認される。この時、母親の卵の一部に胚発生が確認されたが孵化はしなかったようだ。ところが、2015~2016年に生まれたレオニーの卵のうち、驚くべきことに3個が孵化したのだ。また、娘の生んだ卵からも1匹が生まれたという。

 実はトラフザメの単為生殖はすでに報告されているのだが、専門家が驚いたのは、レオニーが生んだ卵まで孵化したことだった。オスとの間に子どもを作った経験のあるメスが単為生殖する例は、極めて珍しいのだ。レオニーの娘の処女懐胎も珍しいことではあるが、サメや爬虫類などでは、オスのいない環境でメスが単為生殖することはよく知られている現象だ。かつて同居していたオスの精子がレオニーの体内に残っていた可能性も指摘されていたが、科学誌「Science Report」に論文を発表したクリスティン・ダッジョン氏の調査によると、レオニーの子どもたちの遺伝子から父親の痕跡は見つからなかった。


■理学博士X氏が単為生殖の神秘を緊急解説

 では、単為生殖で子どもが生まれることに問題はないのだろうか。このニュースについて、生物学に詳しい理学博士X氏に尋ねてみた。

「生殖には、必ずしもオスとメスが必須というわけではないんです。自然界では、生殖に直接関わらないオスはそもそもコストなんです。メス1匹いれば生殖が可能なら、その方が種の繁栄につながります。それなのに有性生殖が広く見られるのは、有性生殖によって生じる遺伝的多様性が、病気や環境の変化への耐性につながるためだと考えられています」(X氏)

 単為生殖は、爬虫類・鳥類・魚類・昆虫など、自然界のあちこちで見られる現象だとX氏は指摘する。ダニやミジンコなどでは、オスが生まれることの方が例外というケースもあるという。

「単為生殖とはいえ、体内で卵が成熟する過程では遺伝子の組み換えも起こっているので、生まれた子どもは母親によく似てはいるものの、クローンではありません。このサメの場合も、オスがいないのでとりあえず単為生殖し、自分の遺伝子を残したと考えるのが妥当でしょう」(X氏)

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