「化石の王様」は頭でセックスしていた! 4億年前の三葉虫の“頭部繁殖行動”が化石で判明!
あなたは、太古の生物たちがどのように繁殖していたのか、考えたことはあるだろうか?実は彼らの生殖については、わかっていることよりも謎の方が多い。骨格などの硬い組織はともかく、皮膚や生殖器といった軟組織や柔らかな卵などが化石として残ることは滅多にないからだ。三葉虫のようにたくさんの化石が見つかっているような生物でも、体内の構造が化石として残ることは極めて稀であるため、その生殖活動についてはほとんどわかっていない。しかし最近、その生息期間や多様性から「化石の王様」とも呼ばれる三葉虫の化石から、卵とみられるものが初めて見つかった。しかも、卵は頭部に存在していたというのだ。この驚くべき発見は先月、学術誌「Geology」に掲載された。
■目のすぐ近くに卵を抱えていた!
三葉虫は古生代(約5億7500万年前~2億4700万年前)を代表する節足動物であり、その化石は世界中で見つかっている。非常に種類が多い生物であり、なんと1万種以上が存在していたといわれている。
今回、卵が見つかった化石はアメリカ・ニューヨーク州で発見された、古生代・オルドビス紀(約4億8千万年前~4億4000万年前)に生息していたTriarthrus eatoniという種である。この種は、低酸素の泥の中に暮らしていたと考えられている。化石は生前の形状が非常によく保存されており、外骨格は完全に黄鉄鉱(硫化鉱物の一種)に置換されていた。卵とみられるものは三葉虫の頭部、目のすぐ側で発見された。それは0.2mmほどの大きさで、球形か楕円形をしており、腹側に存在していた。
■古生物の繁殖を解き明かすカギか!?
頭部に卵があるというのは、奇異に感じられるかもしれない。だが、現代のカブトガニもこの三葉虫と似たような場所に卵を持っていて、頭部の穴(生殖孔)から放出することが知られている。カブトガニは古生代からその姿が変わらない「生きた化石」であり、三葉虫が死に絶えたペルム紀末期の大量絶滅を生き抜いた生物でもある。研究者らは、三葉虫の卵や精子も、カブトガニと同じく、頭部のどこかにあった生殖孔から放出されていたと推測している。
今回の発見は、古生物の繁殖に関する数少ない貴重な情報である。前述のように、三葉虫は非常に多種多様な生物のため、すべての三葉虫が頭部に卵や精子を抱えていたとは限らない。だが、これまでに発見されている三葉虫の群れの化石には、別の個体にのしかかっているような姿も確認されている。その様子はカブトガニの抱合(交尾)にも似ており、見方によっては、交配の真っ最中とも考えられる。節足動物の繁殖行動は、太古の昔からさほど変わってはいない可能性もありそうだ。
もしも、節足動物が数億年の時を超えて繁栄し続ける一つの要因に、「多種多様な生殖行為の形」を挙げられるとするならば、私たち人間も、さまざまな性行為に勤しむことが種の存続に優位に働くかもしれない。
(吉井いつき)
参考:「Science」、「GEOLOGY」、「岡山市カブトガニ博物館」、ほか
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