


岡本敏子賞に輝いた井原宏蕗の作品《cycling》もまた家畜として身近な動物をモチーフとしながらも、それぞれの動物の糞を漆(うるし)でコーティングして作り上げた彫刻であることを知ると、そこに込められた現代の人間社会に対するシニカルな視点がみえてくる。「動物を通じて、生命の生きた痕跡をいかに普遍的なものに変えていけるかを考えて制作しています。この一年間、汚いものを触ってきて、やっと日の目を見ることができました」と井原はコメントした。鹿、山羊、ロバ、豚、羊、兎、鳩、原寸サイズで作られた動物たちの黒光りした見事な仕上がりとリアルなたたずまいには息を飲む。