【3.11特集】雲仙・普賢岳噴火による津波被害を題材にした幻の日米合作映画『大津波』の内容と撮影風景を天野ミチヒロが語る

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 物語の舞台は、具体的な場所を特定していない小さな村。両脇が海で囲まれたわずかな面積の平野部には漁村があり、山の斜面では農業が営まれ、山頂には長老が住んでいた。長老を演じたのは、アカデミー賞作品『戦場にかける橋』(57年)などに出演しているハリウッド草創期の大スター・早川雪洲(せっしゅう)。

 漁師の子・トオル(設楽幸嗣)と農家の子・ユキオ(太田博之)、その妹・セツ(小5のジュディ・オング)は大自然の中で伸び伸びと暮らしていた。トオルに恋する海女の娘ハルコは、彼と仲良しのセツに日頃から辛く当たっていた。トオルの父親役・中村哲とユキオの父親役・ヘンリー大川は、怪獣ファンならお馴染み円谷作品常連の国際的俳優だ。

 作品開始30分ほどで最大の見せ場がやってくる。ある日トオルの父は、普段は見ないサメが沿岸近くに現れたことから津波を警戒し、念のためトオルを高所にあるユキオの家に預ける。その夜、普賢岳が噴火して地震が発生し、大津波が漁村を襲う。

 中野監督は「テレビ用なので1カットが短くて迫力がイマイチ」といった旨の感想を述べていたが、なかなかどうして短時間なりに凄まじい津波シーンであることに変わりない。アナログ特撮の粋を尽くした職人技は、60年近く前の映像とはいえ、迫力という点では決して現在のデジタル映像に劣っていない。むしろ生々しい恐怖を感じる。

 オープニングに流れるスタッフ紹介の「スペシャル・エフェクト(特殊効果)」で、5人の名を発見する。キャメラマンの有川貞昌と荒木秀三郎、美術監督の渡辺明、照明の岸田九一郎、最後は円谷英二。この5人は『ゴジラ』(54年)の精鋭だ。そしてこの手練れの中で臆さず剛腕を振るっていた若者が、1959年に東宝砧撮影所へ入社したばかりの中野監督。名前がクレジットされない新人にも関わらず、円谷英二監督から全幅の信頼を受け、作品にとって肝といえる津波の特撮を任されたスーパールーキーだった。

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