550万年も封印されていた「モビル洞窟」がヤバすぎる! 独自の生態系と謎の生物48種が暮らす“地底の異世界”の謎=ルーマニア

■洞窟内で発見された48種の奇妙な生き物

 現在、英プリマス大学で教鞭をとる微生物学者のリーチ・ボーデン氏は、モビル洞窟を探検した世界で29人目だが、2010年に英BBCの番組で探検当時の模様を次のように語っている。

550万年も封印されていた「モビル洞窟」がヤバすぎる! 独自の生態系と謎の生物48種が暮らす地底の異世界の謎=ルーマニアの画像3 画像は「YouTube」より

「洞窟内の気温は大体摂氏25度くらいですが、耐え難いほど湿度が高く、かなりムッとしていました。もちろん作業服を着て、ヘルメットを着用していたせいもありますが。腐った卵のような硫黄臭というか、ゴムが焼けるような臭いというか、ひどい吐き気に襲われました」(リーチ・ボーデン氏)

 洞窟内の空気は外圏大気とはまったく異なるうえ、酸素濃度は外気と比較すると3分の1~半分しかない。しかも、二酸化炭素は通常の100倍で、メタンは1~2%、空気と湖水の両方から硫化水素とアンモニアが検出されている。

 550万年もの長きにわたり密封されていた空間にも生物は存在するが、その生態系は想像を絶するものだ。地底湖は、何十億という種類の無機栄養細菌の宝庫だが、生物学者がこれまでに確認できたのは、ヒル、蜘蛛、タイコウチ等の48種の生き物だけで、内33種はルーマニア国内のみに生息するという。しかも、これらの生物には目がなかった。完全な真っ暗闇なので視力は必要なく、退化してしまったのだろう。洞窟内の食物連鎖は、メタンと硫黄酸化細菌による完全に独立した化学合成により成り立っている。

550万年も封印されていた「モビル洞窟」がヤバすぎる! 独自の生態系と謎の生物48種が暮らす地底の異世界の謎=ルーマニアの画像4 画像は「YouTube」より

 洞窟内への侵入は極めて危険であり、調査のための滞在時間は5~6時間までと限定されている。6時間を超過すると、腎臓がやられてしまうからだ。どうしても探検したい人は、ルーマニア政府からの特別許可を必要とする。

 地球上には今なお、前人未到の秘境が数多く残されている。だが、地底に限っては、ジュール・ヴェルヌの小説『地底旅行』のようなロマンと冒険だけを期待すると、痛い目に遭いそうだ。
(文=佐藤Kay)

参考:「EWAO」、「BBC」、ほか

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