宇宙からのエネルギーで生きる“不食夫婦”の謎 ― 特殊な代謝経路か、9年間不食の謎とは?

 宇宙エネルギーを取り入れる呼吸法を学ぶだけで食費が浮くなら何と素晴らしいことだろう。だが実際のプログラムを見ていくと、体調に気をつけながら少しずつ食事を絶っていくという、僧侶の断食修行にも似た苦行が必要となることに気づく。当たり前だが、食事を断つのは難しいことなのだ。

 ブリザリアンの教義は疑似科学であるという指摘もあり、実践しようとして死亡した例も複数確認されている。また、ジャスムヒーンをはじめブリザリアンたちも完全に食を絶っているわけではなく「ほとんど」食べていない状態だということにも注意したい。彼らは宇宙からエネルギーを得ているのではなく、たまの食事の時に必要な栄養をまとめて摂取しているだけではないかとの指摘もある。


■実験で証明された「不食」

 ただ、本当に不食であることが実験によって証明されたケースもある。インドの行者プララド・ジャニ氏は70年以上一切の飲食をしていないといい、2003年には医療機関による監視実験をクリアした。また、同じくインド人のヒラ・ラタン・マネク氏は、サンゲージング(太陽光を見てエネルギーを吸収する)を行うことで、水だけを飲めば生きられるという。彼もまた、アメリカの大学での調査で不食を証明した。

 人間には体内で合成できない栄養素が複数あり、食事から摂取しなければならない。では、真の不食の人々はそれらの栄養素をどのように得ているのだろうか? 可能性として挙げられているのは、不食者たちに必要な栄養素を作る(あるいはそれらを必要としない)特殊な代謝経路が存在していることだ。また、特殊な腸内細菌が不足したエネルギーや栄養素を賄っている可能性も指摘されている。だが、これらはあくまで可能性であり、推測の域を一切出ていない。

 果たして人間は何も食べずに生きられるのだろうか? いつの日か、誰もが食事をせずとも生きていけるようになるのだろうか? とりあえずその日が来るまでは、食費を惜しむより日々の食事を楽しむ方が幸せだろう。


参考:「Independent」、「Daily Mail」、ほか

文=吉井いつき

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