もうすぐインプラント終焉、失った歯を培養して完全再生できるようになる? 大変革期に突入した歯科医療の最前線を徹底解説
日々進化する再生医療はあらゆる医療分野に大変革をもたらしているが、我々の多くが最初にその恩恵を受けるのは歯科かもしれない。
再生医療に必要な幹細胞は、実は歯からも採取できる。抜けた乳歯や抜歯した親知らずなどに付着した軟組織や歯髄(神経)には、幹細胞が含まれているのだ。歯の幹細胞は増殖する能力もさまざまな細胞に変化する能力も高く、iPS細胞の作成にも適していることがすでに判明している。歯科は再生医療を応用しやすい分野でもあるのだ。
■歯の完全再生へ
歯科分野でもっとも期待されているのは、やはり歯そのものの再生だろう。現在のところ、抜けたり折れたりして失った歯はインプラントや入れ歯で補うしかないが、元どおりの健康な歯を取り戻せるなら、それに越したことはない。
歯を再生させるには、まず「歯胚」という歯の元になる組織を作らねばならない。次に、歯胚を口の中に移植できる段階まで育てる必要があるのだが、そこで現在考えられている手法は主に2つだ。ひとつは顎の骨の中や皮膚の下などに埋めて培養する体内培養法、そしてもうひとつはシャーレの中で培養する体外培養法である。歯胚は体の中で、あるいはシャーレの中で、歯と歯の周囲にあるさまざまな組織へと成長していく。
残念ながら、歯の完全な再生治療は未だ動物実験段階である。しかし、歯の再生研究は日本でも広く行われており、今年の3月には岡山大学でイヌの歯の再生実験が成功したという論文が出ている。だが、比較的大きな動物であるイヌでの実験成功は、人間への応用に向けて一歩前進した証拠といえる。
■虫歯の再生医療
歯そのものの完全な再生はもう少し先の話だが、歯の内部や周辺組織の再生については実用化が着々と進んでいる。虫歯の治療では新たな治療法や薬が開発され、臨床試験も行われているのだ。
そのひとつが歯髄再生治療法だ。これまで、ひどくなった虫歯はドリルで穴を開けて神経を除去し、金属や樹脂で埋めてしまう治療が一般的だったが、空いた穴に充填材ではなく幹細胞まで移植し、象牙質や歯髄を再生させようという試みである。すでに日本でも国立長寿医療研究センターが臨床試験を行っている。
また、幹細胞ではなく、再生を促進するような薬剤を使う方法も検討されている。イギリスの研究によれば、ある薬剤を含んだコラーゲン製のスポンジを虫歯の穴に詰め込むと、象牙質の再生が見込めるというのだ。この薬剤は、もともとアルツハイマー病の薬として開発されたものだが、歯の象牙質を形成する象牙芽細胞の働きを促進する作用があるそうだ。コラーゲン製のスポンジは体内で自然分解し、数週間後には虫歯の穴は元どおり象牙質で埋まる。現在は動物実験の段階だが、うまくいけば今年中にも人間での臨床試験が始まるという。
多くの人にとって身近な歯科。再生医療発展の恩恵を受け、歯科治療は今後十数年でガラッと変わってしまうかもしれない可能性を秘めているのだ。
参考:「岡山大学」、「国立長寿医療研究センター」、「Scientific Reports」、ほか
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