奇形写真が多数流出、ナチスだけじゃなかった!「欧米の優生学の記録写真」が公開、遺伝子抹消の過去が明るみに
昨今、「受精卵の“選別”は認められるか?」という論議が盛んである。しかし人間の能力を測定し、望ましくないと思われた劣性遺伝を取り除くシステムは、かつて世界中で実践されていた。
■優生学とは?
優生学(Eugenics)とは、1883年に進化論で知られるダーウィンのいとこのフランシス・ゴルトンが名付けた応用生物科学だ。人類の遺伝的素質を向上させ、劣悪な遺伝的素質を排除することを目的としたものであった。
彼は優れた精神、肉体的特性を持つ人間を育てることは、社会全体の福祉にとって不可欠であると信じていた。ゴルトンはその科学的貢献から英国でナイトの称号を与えられ、彼の著書は英国とアメリカにおける優生学運動のはじまりに重要な役割を果たした。
ご紹介する写真は、アメリカ議会図書館に保存記録されていたもので、世界が忘却の彼方に葬り去りたい優生学運動全盛期に撮影されたものである。




■欧米における「優生学」
「優生学教育協会」は1907年に英国で設立され、英国人の“退化”を防ぐことを目的に、弱者の断種と婚姻制限を目指した。
また同時期、米国でも特定の障害を持つ人々が子どもを持つことを禁止する世界最初の断種法がインディアナ州で通過した。その結果、「精神的に問題がある」とみなされた成人および子どもに対する強制的な断種が合法となった。
1938年までに、アメリカの33州が学習障害を持つ女性の強制断種を許可し、29州では遺伝病を持つ人々を対象とした強制断種法が議会を通過した。その後この動きはさらに進み、イリノイ州の精神病院は人類の不完全部分を解消する慈悲の殺害として、結核菌を意図的に感染させて患者を安楽死させていたという。
一方、英国でもウィンストン・チャーチルを筆頭に、学習障害や精神病患者の強制断種を勧める運動は勢いを増し、1931年には「精神病患者」の強制断種法案が議会に提案された。この法律は実際には英国では通過しなかったが、強制・強要された断種や不妊手術は形を変えて行われていた。
ドイツのナチスによって同様の法律が導入されたのは1933年なので、20年以上前にこれらの思想は既に英米では推進されていたことになる。実際ナチスの「断種」キャンペーンは、アメリカによって行われた先例を参考にしていたという。 その後、「望ましくない」遺伝子は抹消する必要があるという主張はヨーロッパも席巻した。
また人間の性格や犯罪傾向は、頭蓋骨のサイズと形によって決まるという考えも多くの科学者が信じて疑わず、犯罪者の頭蓋骨の測定が精力的に行われた。また他の優生学支持者は皮膚の色に基づき、特定の人種グループ全体を抹消することを提案した。
1920年代と30年代に同様の断種法を持った国には、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドが含まれる。このような驚くべき発想がその後、ナチスドイツに根をおろしホロコーストの恐怖を引き起こした。
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