幻聴を聞いている脳の場所が特定される! “神の声”の謎も解明、統合失調症の治療に劇的進歩か!?

■誰にでも起こる幻聴

 幻聴は誰にでも起こり得る、割とありふれた現象だ。寝入り端に聞こえる突然の叫び声、金縛り中の不気味な囁きなども(霊体験と言いたいところだが)どれも幻聴だ。言葉ではなく、音楽が聴こえるタイプの幻聴もある。高熱を出して寝込んでいたとき、奇妙な声や音楽を聞いた記憶はないだろうか。ストレスや病気による一時的な幻聴はそれほど珍しくないことなのだ。

幻聴を聞いている脳の場所が特定される! 神の声の謎も解明、統合失調症の治療に劇的進歩か!? の画像2画像は「Wikipedia」より引用

 では、人間はどうして、現実にはないはずの幻の音を聞いてしまうのか? オカルトと生物学に詳しい理学博士X氏に尋ねてみた。

 「誰だって頭の中に言葉や音楽が流れていると思いますが、普通はそれが外から聞こえているものではないとわかっています。でも、頭の中の音なのか現実に鳴っている音なのか、その区別がつかなくなることがあります。それが幻聴です。今回治療が行われた脳の領域は、その区別に関わっているのかもしれません」(X氏)

 ただ、この能力についてはまだまだ未解明な部分が多いとX氏は指摘し、とある興味深い説の存在を口にした。

 「大昔の人間にとって、幻聴はごく当たり前のことだったという説もあります。まだ言語が未発達で我々もその使用に習熟していなかった時代、人間に今のような意識はなく、頭の中の内なる声として現実のものと同じように聞こえていて、人々はそれを神々の声だと認識していたという仮説です」

 これはジュリアン・ジェインズというアメリカの心理学者が1976年に自著『神々の沈黙 ― 意識の誕生と文明の興亡』で発表したユニークな仮説である。「イーリアス」など古代の文献では、神々の言葉は人間に直接語りかけられるものと描かれているが、これは文学的な表現ではなく、古代ギリシアの英雄たちは“実際に”神々の声を聞いていたというのがジェインズの主張だ。

 「現代でも、山で遭難して彷徨っていたら突然誰かの声が聞こえて、その指示に従ったら助かった、というような話が時々ありますよね。ああいうのは、もしかすると極限状態で起きた先祖返りみたいなものかもしれません」

 残念ながら、ジェインズの仮説を裏付けるような科学的な証拠は見つかっていないという。しかし、実にロマン溢れる話であるのは間違いない。


参考:「EWAO」、「Futurism」、「厚生労働省」、ほか

文=吉井いつき

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