被差別部落民、在日朝鮮人、貧困層が犠牲者に…! 鬼才・原一男が新作映画『ニッポン国VS泉南石綿村』を語る
『極私的エロス・恋歌1974』(1974)や『ゆきゆきて、神軍』(1987)など、伝説的なドキュメンタリー映画を手がけてきた原一男監督。その新作が、2018年3月10日から東京・渋谷のユーロスペース他にて全国順次公開される。
すでに、2017年釜山国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞や山形国際ドキュメンタリー映画祭市民賞、東京フィルメックス観客賞などを受賞している今作について、原監督にお話を伺った。
■この映画は「撮らせてもらった」
――映画には、厚生労働省への直訴行動など、「大阪・泉南アスベスト国賠償訴訟」関連の二ュースなどには決して出てこないシーンも丹念に撮られています。どうやって撮影を?
原監督 この映画はそういうシーンも含めて、被写体の人々に「撮らせてもらった」映画なんです。ただ、私はこういう言い方はとてもイヤだったのですが。
昔、ドキュメンタリー映画の先達である小川紳介監督(『日本解放戦線・三里塚の夏』など)がよく「みなさんに撮らせてもらった」という言い方をしていまして、なんか白々しくて偽善的に聞こえたんです。映画というものはもっと、「被写体の人生の一部を奪い取る」であるべきだと思っていましたから。でも、今回の作品だけは、本当に「撮らせてもらった」と考えていますね。
出演者はみんな普通の人だったので、彼らのプライベートにぐいぐい入り込んでいくことは拒絶されていました。被写体と敵対するような過激なアプローチも通用しない。だからこそ、「撮らせてもらえるまでひたすら待つ」ということで進んでいったのがこの映画です。私の中では、初めての方法論でした。
映画の中で、石綿患者の西村東子さんの身体のしんどさを描くシーンがありますが、そういうのも撮らせてもらったものです。西村さんはいちばん気安く接してくれて、インタビュー後に、「私は風呂にはいると、咳がとまらんくなるのよ。そういうの、撮りたいんやろ?」って、ニコニコしながら言ってくれるんです。それで、「ええ、ぜひ!」と言ってカメラを回せたシーンでした。実際には、本当に苦しそうで、撮る方もしんどかったです。
他にも、撮らせてもらったシーンはいくつもあります。厚生労働大臣が泉南市地域に来て、亡くなった石綿患者の遺族を見舞うシーンなども私だけが撮らせてもらっています。
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