【取材】20年以上“人間のマンダラ”を撮り続ける写真家・宇佐美雅浩!分断の地・キプロスを無限スケールの曼荼羅で表現!

■「撮らされている」という感覚

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タイトル:ニコラス・トリフォン 南側、アイオス・ソゾメノス 2017。LGBTグループ代表の ニコラス・トリフォンさんの背景ではたくさんのカップルがハグをし、キスをしている。顔をマスクで覆っているのは、キプロスではLGBTをカミングアウトすることが一般的ではないから。


 そんな絶望的な状況下、ワラをもすがりたい時に、足りないピースが一気に埋まるように、志を共有できる優秀な協力者が集まり始める。

「メイン写真の撮影後に私が撮影したクルトゥルシュ・アルタイリさんが通う大学の先生は、被写体の紹介から制作進行まで、びっくりするくらい完璧にやってくれました。彼はクルトゥルシュさんから私の撮影の話を聞いていて、それとは別に、知り合いの映画監督からも私の話が来たのだそうです。『これはやらなければならないと直感で思った』と言っていました。日本人の通訳も優秀で想いが通じる人でした。僕と現地人との間に挟まった苦しい立場なのにギャラも受け取らない。彼女が言ったんです。『宇佐美さんのような人に会ってこういうことになることは、少し前に、ある人から言われて知っていた。だから、やらないといけないと思った。手伝えて嬉しい』って。他の手伝ってくれたみんなもほとんどボランティアみたいな金額で仕事をしてくれました。多くの人に助けてもらいました」(宇佐美氏)

 宇佐美さんが大規模なプロジェクトを手がける時には、奇跡的な状況が起こるようだ。

「いつもそう。あらゆることをして限界まで手を尽くす。それでもどうにもできない局面が来る。でも、その時に、奇跡的に物事が急に進み出す。自分にできることをギリギリまでやると何かが動く。最後にはどうにかなるっていうのが私の経験則なのです」(宇佐美氏)

 これまで何人ものアーティストをインタビューしてきて気づいたことがある。それは、優れた表現者は共通して「何かに作らされている」「背中を押されている」ように感じられるエピソードを持っていることだ。

 以前、TOCANAで都築響一さんをインタビューした際、都築さんは「大きな本を作る時には必ず事故が起きて、それが奇跡的に解決する。何かに背中を押されているような体験をすることがある」と言っていた。

「『やらされてる感』ですよね。そんな意識はあります。以前、広島を撮った後に『次は長崎を撮るべき』といろいろな人に言われたんです。『1枚撮るのだって大変。みんなが言うほど簡単じゃない』って内心は思っていたけれど、しばらくして、やっぱり撮らなきゃダメだって思ってしまいましたしね。制作費の面でもいつもしんどい。でも、やっていればまたどうにか付いてくるっていうのはあるんです」(宇佐美氏)

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