撮影のきっかけは、東北の農村を撮り歩いていた時に知り合った津軽のおばあさんたちが発する明るいエネルギーに衝撃を受けたことだった。
「私も最初は死者を呼ぶ巫女たちの世界だから、さぞおどろおどろしい所だと思って行ったわけです。ところが行ってみると、お婆さん達が夜中ドンチャン騒ぎするものすごく楽しい所だった」(『現代詩手帖』1987年4月号)
『月夜の盆踊り 赤倉法泉院』「婆バクハツ!」より 1969年 ゼラチン・シルバー・プリント 東京都写真美術館蔵
そのさまを、内藤さんは当時は報道写真の現場のような特殊な状況下でしか使われていなかったストロボの多用と、ノーファインダー撮影(カメラのファインダーを覗かずに撮影する手法)で、まるでジャズの即興演奏のようなグルーブ感で撮影した。写真が発する怪しさや神秘性、不思議な高揚感は、この撮影手法によって増幅されていると言っていいだろう。