■修験道の聖地を撮る
東北の民間伝承をハイコントラストなモノクロ写真で切り取ってきた内藤さんは、1980年にカラー作品を発表する。修験道の聖地である羽黒山、月山、湯殿山を撮った「出羽三山」のシリーズである。
『お沢仏 梵天帝釈両部大日大霊権現像 大日坊』「出羽三山」より 1982年 銀色素漂白方式印画 作家蔵
さらに、1984年には、ポラロイド20×24インチ写真システムという巨大なカメラを使い、ロウソクの炎のみを光源にして、それまで自身が撮影していた出羽三山の写真を接写した「出羽三山の宇宙」を撮っている。
『びんずる尊と羽黒鏡、海向寺、出羽三山神社』「出羽三山の宇宙」より 1984年 発色現像方式印画 作家蔵
1時間から2時間半の露光と、さながら密教の秘儀のような撮影手法から生み出された超現実的なイメージは「私自身の“出羽三山”」と本人が語るように、内藤正敏という写真家と東北という土地が感応しあって生み出された「内藤正敏的コスモス」の発現と言っていいだろう。