■豊かと言われる隣国、日本への素朴な疑問
北朝鮮の日本担当の政府関係者と初沢さんとのやりとりのなかドキッとした一文があった。『日本はどうしてアメリカから独立しないのか?』という案内人からの問いかけだ。
「直球のような質問に一通りの返答はしました。以前、ある自民党の議員から『いまだ日本は敗戦国なのだ』と言われたことがあります。敗戦国ゆえにアメリカに握られている軍事的、経済的な部分、日本人がそれを選択せざるをえなかった事情、一方で手に入れた経済発展がもたらした豊かさがどれだけ我々にとって大切だったかを、彼らは実感としてわからない。そして次には『豊かになったのに、なぜ1年に3万人近くもの自殺者が出るのか?』という質問が飛んできたのです」(初沢)
問いかけの裏には、案内人たちの、資本主義経済や民主主義に対する一定の関心がある。
「『資本主義経済、民主主義は社会を、人を幸福にするのか?』と彼らは真面目に考えています。豊かな隣国である日本を見ると自殺者は多いし、1票の権利を行使する者は半数に満たず、安倍一強の独裁体制のような状況になっている。『なぜ?』と聞きたくもなりますよね」(初沢)