セミをSEX狂の“性蟲”に変貌させる菌が発見される!最後は「性器爆発」壮絶症状!
■病原体の秘密は麻薬成分?
腹部のないセミが飛び回り、オスメス構わず交尾を迫る……。セミにとっては実に恐ろしいこの病原菌について、最近興味深い論文が発表された。米ウェストバージニア大学のマシュー・カーソン氏はMassospora cicadinaに侵されたセミを調べたところ、シロシビンという化学物質が検出されたのだ。
シロシビンはマジックマッシュルームの幻覚成分として知られている物質で、人間でも摂取すると幻覚や幻聴を体験し、多幸感を覚えたり神秘的な心的体験をしたりするという。日本でも麻薬として取り締まりの対象になっている物質である。
だが、驚くことに、検出されたのはシロシビンだけではなかった。Massospora platypediaeやMassospora levisporaに感染したセミからは、カチノンというアンフェタミンに似た中枢神経興奮作用を持つ物質が見つかったのだ。こちらも日本では覚醒剤として規制の対象となっている。カーソン氏はシロシビンやカチノンが腹部がボロボロになったセミが食事もせずに動き回り、交尾を続ける原因と考えている。論文はプレプリントサーバ「bioRxiv」に7月24日付で公開された。
■宿主を操る病原体は他にも
宿主を操って自分の都合の良いように行動させる病原菌はマッソスポラだけではない。例えばタイワンアリタケという菌はアリに感染し、葉の裏などに移動させてから殺し、その体を突き破ってキノコを生やす(詳しくはこちらの記事)。また、寄生ハチなどに感染するボルバキアという細菌の一種は、感染した宿主がメスの場合はオスなしでも単性生殖できるように変化させることが知られている。メスの生んだ卵からはボルバキアに感染した子が生まれる。もし宿主がオスだった場合、体がメス化して子孫は残せなくなる。
いずれの病原体も、人間に置き換えて考えるといずれも大惨事としか言いようのない事態を引き起こす。幸いなことに人間でこのような症状を引き起こす病原体は存在しないが、最近、トキソプラズマという原虫に感染しているとリスクを恐れぬ起業家になりやすいという研究も発表されている(詳しくはこちらの記事)。まだ気付いていないだけで、人間の行動や心理に影響を与える病原体は存在しているのかもしれない。
なお、セミをセックスゾンビにする病原菌マッソスポラは、1951年に東京、1999年に小笠原と、日本でも過去にたった2例だが報告されているそうだ(森林総合研究所より)。もしも腹がないのに飛び回っているセミを日本で捕まえたなら、近くの大学や研究所に届けると喜ばれるかもしれない。
(編集部)
参考:「Daily Mail」「The Atlantic」「bioRxiv」、ほか
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