「ションベンかけながら殴られたのでキレた」the band apartベーシストで怪談師・原昌和の“聖糞飛来通信”

【新連載】the band apartベーシストで怪談師・原昌和が、自身の異常性をさらす連載コラム「聖糞飛来通信(ひじりぐそひらいつうしん)」!

第一回:いじめられっ子が異端者になるまで

「ションベンかけながら殴られたのでキレた」the band apartベーシストで怪談師・原昌和の聖糞飛来通信の画像1原昌和

俺は「聖(ひじり)」になりたかった。日蓮もキリストも、世界中の誰もが追従すら出来ない程の孤高の聖(ひじり)に…。

1980年代の日本。幼少期の俺は「痩せたノッポ」の姿でこの世に降臨していた。

幽霊を筆頭に、暴力、天災、虫。ありとあらゆる恐怖の種を恐れぬく、臆病者の「痩せたノッポ」として降臨していたのだ。

お化けなどは本の表紙を見るだけで泣き喚いたし、虫に至っては、特定の虫が道にいるだけで、何キロ迂回してでもその道を、向こう一年は通らない程の臆病者の「痩せたノッポ」としての降臨であった。

小学生のガキの目にとって「恐怖に震える痩せたノッポ」なんて物は、蹴り込む為に地面に生えた杭だ。つっかえ棒だ。当然、歩いているだけで蹴り込まれたし、鳩尾(みぞおち)を永遠に殴り続けてくる奴も出現した。鼻下に唾を吐きかけた刹那、素早く擦り込みつつ逃げていく奴まで現れる始末。友達などできるはずもなかった。

それなのに俺の趣味は、なんと「手品」だった。来る当てのないお披露目の場を思い描き、鏡の前、傷だらけの心と体に山高帽とマントを纏い、手品の練習に明け暮れていたのだ。とにかく、同級生の若い新鮮な脳は、ありとあらゆるアイデアで幼い俺の行く手をはばんでくる。

いいか昌和。聖(ひじり)の道というものは、常に『ハードな法難』が襲って来るものなのだ。だから、法難が襲って来るという事は、すなわち自分が正しい聖道(ひじりみち)を歩いていると言う証明なのだ」と日々、父親に厳しく言われていたので、唾を塗り逃げられる度に「これが聖(ひじり)に必ず訪れると言われる法難か。哀れな俗衆よ去れ!我こそ聖(ひじり)なり!」と思い込もう思い込もうとしたが、やはり限界は訪れた。

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