「おっさんずラブ」を絶賛する人に欠けている視点 ― 見えざる非差別に気付かぬ人々(東大教授寄稿)
この正解は、ラブホで働く人たちがチラホラSNSで呟いてます。ネットで局部アップ動画を見れば確認できますよ。素人のアナルセックスは、なるほど大便や腸液が流れ出したり、飛び散ったりしてますから。
このクイズ、私いろんな人に投げかけてみたんですが、正答率、きわめて低いですねえ。同僚の教授ら数名と飲んだ時も、正解者ゼロでした。差別問題の研究者もいたのに、困ったことです。シモネタを押さえとかないと社会を正しく批評できっこないのに……。
この事情、旅館業法第5条に該当するかどうかは微妙ですが、ゲイカップル拒否に〈差別ではない理由〉があることは間違いありません。短絡的に「差別!」と決めつけちゃ、なかった差別がつくり出されてしまう。
これって怖いことですよ。人が差別する最大の原因(もしかしたら唯一の原因)は、「みんなが差別してる」という思い込みそれ自体だったりするので。日本でいちばんクッダラナイ差別である部落差別はまさにそれでしょ。同性愛差別も、差別だ差別だってすぐに騒ぎ立てずに、差別以外の事情を探して、そっちをまず議題にすればいいんです。そしたらゲイ文化に〈穴の中身への意識〉が発達して、ホテルに迷惑がかからなくなり、共存共栄できるじゃないですか。
こないだの『週刊SPA!』「ヤレる女子大学生」だって、男の性欲と女の金銭欲のマッチングという単なる力学が、「女性蔑視」とかいうありもしない差別問題の衣を着せられ、話が無駄にこじれてましたよね。
●「週刊SPA!ヤレる女子大学生ランキング」への批判や抗議こそ差別! ヤラせる女の多様性を尊重せよ(東大教授寄稿)
痴漢にしても、「女性蔑視」の決まり文句でくくられがちですが、あんなもん性的嗜好で100%説明できる。男女も同性愛も、差別の亡霊を捏造するの、もうやめにしましょうよ。
まあ今後、いろんなパターンが出てきそうです。見えざる非差別を見据えるには、「事実」をしっかり、シモネタ含めてわかり合わなきゃダメですね。そう、「事実」……「ゴムを付けたくない人の理由って何が多いですか?」「MtFビアン※1ってやっぱ挿入するんですか?」「ビアンサイトで〈トラです〉と自己紹介してるFtM※2って、性自認Fなんですか?」「貧乳フェチって男の胸に萌えますか?」……そんなレベルの情報共有。議論の土台となる事実をみんな知らないままだから、やみくもに「差別」に飛びついてしまうんです。
万人に万人のための猥談を!
(三浦俊彦)
※1 Male to Femaleレズビアンの略。身体的には男性で性自認と性指向が女性。
※2 Female to Maleの略。身体的には女性で性自認が男性。
◆三浦俊彦(みうら・としひこ)
1959年生まれ。東京大学総合文化研究科博士課程単位取得退学。現在、東京大学文学部教授。専門は、美学・分析哲学。和洋女子大学名誉教授。著書に『エンドレスエイトの驚愕: ハルヒ@人間原理を考える』(春秋社、2018年)、『改訂版 可能世界の哲学――「存在」と「自己」を考える』(二見文庫、2017年)など。
※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。
関連記事
人気連載
“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】
現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...
2024.10.02 20:00心霊「おっさんずラブ」を絶賛する人に欠けている視点 ― 見えざる非差別に気付かぬ人々(東大教授寄稿)のページです。ゲイ、差別、LGBT、超スカトロジスト時評、おっさんずラブ、天声人語などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで