鹿児島の超強烈B級スポット「戦史館」に潜入! 80超えのお爺ちゃんが案内、戦争グッズ、ガスマスク、軍刀謎、軍国酒場…
店内もやはり手作りっぽいのだが、外観に比べたらだいぶマトモだった。
大将がパチンとスイッチを入れると、スピーカーから昭和歌謡が流れはじめた。
オーナーに「何を食べるか?」と聞かれて、あわててメニューを見る。うどん、ラーメン、唐揚げ定食の三種類があった。とりあえずラーメンを注文してみた。
大将は鍋にお湯を沸かして、袋ラーメンを入れる。ゆっくりと調理しながら、戦争時代の話をしてくれた。鹿児島弁がきつくて、聞き取れない部分もあったが、がんばって聞き入る。以後、標準語で書く。
「戦争が終わった頃はまだ子供だったよ。歩いてたらアメリカ兵に呼び止められてチョコレートを渡された。お腹は減ってたけど、アメリカ兵が渡す食べ物には毒が入っていると大人たちに言われていた。でも覚悟を決めて食べてみたら、ものすごい美味しかった。友達と分け合ってむさぼりながら食べたよ」
と、敗戦直後のエピソードを、まるで昨日の出来事のように話してくれた。
お店の外観からすると、バリバリの軍国主義のオーナーかと思ったがいたって平和主義な人だった。
「俺は西郷隆盛もあんまり好きじゃない。戦後に平民を見捨てた人だからね。本当に戦争はよくないと思う」
としみじみと語る。鹿児島ではもちろん西郷さんは大人気で、空港には巨大な西郷像がそびえ建っている。好きじゃないと言う人はごく少数派だろう。
大将は戦後、多額の借金を背負ってしまったそうだ。再起をかけて鹿児島の繁華街、天文館に『軍国酒場』という飲み屋を作った。もう半世紀以上も前の話である。これが大当たりで、とても繁盛したそうだ。あまりに流行りすぎて、一時は客を入れ替え制にしていたそうだ。まだ戦争経験者も存命していた時代だから、そういう人たちが集まっていたのかというと、そうでもないらしい。
「そういう人も来ていたけど、若いOLさんとかもよく来ていたよ。戦後の懐かしい雰囲気を楽しんでいたのかもしれないね」
繁盛したおかげでずいぶん儲かったそうだ。借金を返済してもまだ余裕があったので、この『戦史館』を作ったという。それ以来ずっと二店舗を同時に営業してきた。天文館にあった軍国酒場は惜しまれながら2016年に閉店した。ずいぶん老朽化が進んでいたが、熊本地震がとどめになったらしい。
「この歳になると知り合いは少なくなるね。死んでしまう人もいるし、会社が定年を迎えて地元に帰る人も多い」
と少し寂しそうに話してくれた。
話をしている間、ラーメンを入れた鍋はずっとグツグツと煮立っていた。話し終えたところでやっとどんぶりにうつした。ラーメンの上には炒めたモツを載せてくれる。
ラーメンは想像どおりにのびのびにのびていた。こんなにのびたインスタントラーメンを食べたのは小学生だった頃以来だ。母親が土曜日の昼に適当に作るラーメンを思い出して、ちょっとノスタルジックな気持ちになった。
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