ーー確かにそうですね。
林 トークのなかで大岡さんが「政治家は誰もが往々にして独裁者になりたいのだと私は思っている」と話していたけれど、この2パターンが向かっているベクトルは、一個人が絶対的権力の象徴、存在であるというところですね。
ーーそうです。
林 一方で、私が蔡総統を撮った写真は、そこをあえて強調していません。一為政者の威風堂々とした姿やパワーを示す写真を撮るのは簡単で、たとえそれが普段の生活を撮ったファミリーショットであっても容易に撮れます。一般に流通している政治家の写真はそういうものだらけですよね。だからこそ、違ったものを作りたかった。アーティストとして挑戦的な姿勢を持ちたかったし、専属写真官の立場にあってもそこに服従したくはなかった。そういう部分を、ある意味、脱構築、解体することもパワーだと思っています。