【都市伝説】本当にあった「お金にまつわる」怖い話! 大学生が身代わりを頼まれ…

――都市伝説!? 経済界の怪談話!

 まだ何も事件になっていないが何かがおきている。気にしていないのは本人だけで、取材した私にもおかしさはわかる。今回はある男性の経験談についてお話ししたい。

 沖縄で音楽活動と飲食店経営を行っているワタルさんが、その体験をしたのは9年前のことだ。

「一流といわれる東京の私大に入学して1カ月で大学には行かなくなって、日常はバンド活動中心になってしまって」

 四国から上京し、それまで受験勉強漬けだった反動で東京の毎日が楽しくて楽しくて仕方なかったのだと言う。大学には籍を置きながら講義にはまったく出席しない。当然のことながら単位も取れない。そんな生活が続いて2年目の正月に帰郷した折に、仕送りをしている親にそのことがバレてしまった。

 

「そこそこ人気が出てきたバンドもメンバーの仲たがいで解散することになって、気分的にどん底の状態で帰郷して、親とは激しい口論となりました」

 それでも、古い考え方の両親を説得するのは難しく、ワタルさんは両親に大学に通って卒業することを約束させられた。

 ところが、東京に戻るとまた新しい楽しい誘いがやってきた。バンドのボーカルだった仲のよい先輩が、その先輩の地元である沖縄のライブハウスから誘われて活動を始めるので、「よかったら一緒に沖縄に行かないか」というのだ。ワタルさんはバンドの中では地味な存在だが、ベースの腕には自信があり、その先輩は即戦力として声をかけてきたのだった。

 大学に通うべきか、それとも沖縄に行くべきか、

「でも両親との関係を考えたら“大学に行くしかないか”と気分がいっそう暗くなったんです」
ところがそこからおかしな方向に話が向かう。

当時のバイト先が下町の小さな物流倉庫だったんですけど、そこの主任から僕の話を聞いたという男がやってきて……

 

 ワタルさんを喫茶店に呼び出した男はと名乗った。日本語も流暢だし外見からは日本人の中年サラリーマンにしか見えないが、中国企業の日本駐在員で機械部品の販売の仕事をしているという。

 金さんは子どもの時代に日本人には想像できないような苦労をしたらしい。その後、中国が国として急速に発展したおかげで当時の生活水準とはまったく違う生活ができている。特に日本で体験している今の暮らしはすばらしいという。そんな話を聞きながら気持ちが打ちとけた頃合いになって、突然、こんな話を切り出された。

「私の国ではまだ勉強したくても満足に進学できない子たちがいる。うちの会社で雇っている子の中にちょうどそんな子がいて、日本語も流暢だし勉強の意欲は人一倍強いのだけど、よかったらその子に大学で勉強するチャンスを譲ってくれないか?」

 要はこれは取引で、これから4年間、その同世代の男の子がワタルさんになりすまして大学の講義を受ける。彼は勉強ができればそれでよいのだという。大学の受講料はワタルさんの両親が大学に払ってくれているが、それと同額を彼が自分の給料からワタルさんに支払う。

「これは秘密にしてほしいのだけれど、その子は密入国者なんだ。だけど私はその子にできるだけのことをしてあげたい。君もあの大学の卒業証書が手に入る。悪い取引ではないだろう?」

 このおかしな話に、ワタルさんはすぐに飛び乗った。だって大学に行かなくてもいい。これで先輩と一緒に沖縄に行ける。それでいて、大学に通っていることにもなるから両親も満足する。お金も手に入る。すべての問題が一瞬にして解決したのだ。

 身代わりの子には一度も会ったことがないが、入れ替わりは思った以上に簡単だった。なにしろ大学にはほとんど通ったことがないし、高校も進学校ではないので同級生も教授も事務員も、誰もワタルさんの顔を知らない。ワタルさんは2月にはアパートを引き払って沖縄で生活を始めた。そしてその子は4月から入学3年目の1年生として大学に通い、ワタルとしての大学生活を始めた。

 

 沖縄での新しい暮らしは楽しかったという。いくつかのライブハウスで掛け持ちの演奏をする一方で、ステージのない日には国際通りの知り合いの居酒屋でバイトをする。毎日がにぎやかで酒びたりの日々。ワタルさんには東京以上に肌にあった場所だったという。

 その後の4年間も何も起きなかった。金さんが約束した通り、ワタルさんの銀行口座には毎月大学の授業料が振り込まれていた。面倒なことはほとんどない。たまに身代わりの子の手続きや身分証明に必要だと、レターパックで健康保険証を送るのだが、それも数日で沖縄に返送されてくる。

「2年目だったかなあ。その子のお母さんが入院したとかで、どうしても里帰りしたいという話になって、オレの名前でパスポートを作らせてあげたんですよ。あのときはおいしかったなあ。人助けになったうえに金さんから臨時ボーナスで20万円ももらっちゃって

 それで困らないのか? と訊ねたがワタルさんは海外に行く機会などないそうだ。

 4年たって、大学の卒業証書も手元に届いた。四国に里帰りした際には両親がとても喜んでくれ、卒業証書を手に家族写真を撮ったほどだ。

 そのまま何も起きずにさらに3年が過ぎ、ワタルさんは国際通りの近くで小さなスナックを開くことになった。それで住民票を沖縄に移さなければならなくなった。事情を話すと金さんは「10万円出すから住民票の移動は2ヶ月待ってくれ」と言ってきた。これもおいしい話だと思ってワタルさんはOKしたという。

結局、その後に住民票も沖縄に移せたし、何にも困ったことはないんですよ

 そう笑うと、ワタルさんはスナックの仕込みの仕事に戻っていったのだが…。10か月後に何が起きたか……それは想像にお任せします。

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文=王山覚

グローバルコンサルティングファームに勤務するビジネスウォッチャー
Twitter:@MTRM3vnXDvjQrE6

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