◾︎新作はインドのバックパッカーたち
ーー東京・丸の内のエプサイトで写真展「Along the Way」が1月6日から始まりました。日本語に訳すと「道に沿って」「旅上」という意味になるでしょうか。バックパッカーを撮ったポートレートで構成されていますが、どのような経緯でこの作品を?
野口 2016年から2017にかけての1年にインドに行く機会があって、その時に撮りました。「庵の人々」の野宿者から緩やかにつながっているのかもしれないのですが、旅や人の移動、そこに流れる時間に興味があって、自分自身もバックパッカーとして旅をしながら、最低限の荷物だけを持って定住せずに移動している人たちのとの出会いや別れをポートレートの形で撮ってみたかったんです。
ーー「定住しないこと」「移動」、「最低限の装備」という点で、野宿者とバックパッカーには通じる所がありますね。どうしてそういう人たちに魅かれるのでしょうか?
野口 野宿者やバックパッカーのポートレートを撮ることは、具体的な人を撮っていることになるけれど、人の移動であったり、時間の流れであったり、人生の移り変わりであったり、写真が持つ時間性や記録性、同じものはなく常に移り変わっていくサイクル、そこに現れる不易流行といった、もう一歩引いた、抽象的な事柄にも興味があるんです。
ーー抽象的な事柄と言えば、2013年の「Portraits(meditation)」は不思議なポートレート作品ですね。あの、わずかにブレてぼんやりとしたような肖像写真は見たことがありません。
野口 インドとネパールで座禅を組んで瞑想している僧侶を長時間露光で撮影したものです。「内省」「ポートレート」「時間」。自分の内に入っている人のポートレートと時間の含み、というのに興味があったので、1分間から2分間シャッターを開けっぱなしにして撮影しました。そうすることで、そこには時間も含まれる。さらには写真的な要素と映像的な要素も含まれている。自分のなかで「Portraits(meditation)」はそういうことを考えるための実験でした。
ーーなるほど。
野口 ポートレートは人を具体的に撮ることだから、個々の被写体について聞かれることが多いのですが、シリーズを重ねるごとに自分の興味、視点はもう少し緩やかにそういった概念へと広がっているのじゃないか、ということが頭の中にはあります。自分自身、まだよくはわかっていないんだけれど。そんなこともあって、なぜそれを撮ったのかとか、シリーズ全てを結びつけて統一したうえで言語化、話すことは、今の段階では難しいかもしれないですね。
ーーこれからも撮り続けて、10年、20年経った頃に何かがわかってくるのかもしれませんね。
◾︎写真展は1月20日まで。Zineも発売中
最後にあらためて、野口健吾写真展「Along the Way」は東京・丸の内のエプサイトにて、1月20日まで開催されている。ぜひとも見に行ってみてください。
また、「庵の人々」「Along the Way」ともに、写真展に合わせて作られたZineが作られていて、オンラインで購入することが可能だ。写真展に行けない読者にも、野口さんがこれまで撮ってきた「定住しない人々」の肖像たちを手にとってみて欲しい。
◾︎作家プロフィール
野口健吾(のぐち・けんご)
1984年、神奈川県生まれ。立教大学社会学部卒業。東京藝術大学大学院美術研究科修了。2016年、ポーラ美術振興財団在外研修員(インド)、2017年、吉野石膏美術振興財団在外研修員(アメリカ)を務める。
公式サイト:http://www.kengonoguchi.com/
https://kengonoguchi.stores.jp/
◾︎写真展インフォ
写真展「Along The Way」
会期:2020年1月6日(月)~1月20日(月)
時間:10:00~18:00(最終日は14:00まで)
休館:日曜日
会場;エプサイトギャラリー
東京都千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル1F
URL:https://www.epson.jp/showroom/marunouchi/epsite/gallery/
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