生物学者・池田清彦が「日本の大麻問題」を語る! 多数派の意見を正しいと信じ込む若い人へ…思考停止こそダメ、ゼッタイ!(高樹沙耶・石丸元章)
●「今年の5月中旬に私は執行猶予が明けたんです」(高樹)
高樹 今年の5月中旬に私は執行猶予が明けたんです。それについて、つぶやいたら、「反省していない」というレスが多かった。そんななか、池田先生が「高樹さんが大麻取締法で有罪となって、執行猶予の期間が終わった件について、反省してないと言っている人がいますが、大麻取締法は憲法違反の悪法なので、反省しないのは当然です。ホリエモンは有罪になった件で刑期を終えたあと反省してるのかしら。司法の判断に従う事と司法が正しいことは別の話です」とつぶやいてくださって、本当にありがたかった。
池田 はい。そもそも、日本の大麻合法化ですけれど、何らかのきっかけばあれば、どーんと進むと考えていますからね。
石丸 外圧による可能性はどうかな。新型コロナ治療薬、アメリカのレムデシビルが、特別承認されたようなことが起これば……。
高樹 しかし、具体的なきっかけ、道筋は見えていません。それに、コロナ禍で自粛精神が高まっているので、余計なことを言わないという空気になっています。ますます問題提起がやりづらくなっている感じもするな。
池田 こういうことを言ったヤツ、やったヤツはいじめていいんだという空気ができると、みんなでバッシングするという。コロナ禍で他に楽しみがないので、いま、うっぷん晴らしをしたい人がいろんなマイノリティをいじめて楽しんでいる。ある意味、ひどい状況ですね。
高樹 一方、みんなの意識は変わってきているとも感じています。この間、Twitterで「新型コロナの死因となる重篤な肺炎に大麻の有効成分「THC」が効果、動物実験で100%が生存」というニュースをシェア。「だから言ったのよ! マスク2枚より大麻の見直し! これはすごい情報ですよ!」とコメントしたんですが、好意的なレスが圧倒的だったんです。
石丸 へええ。
池田 THCが新型コロナ肺炎に効くかどうかはわかりません。しかし精神治療薬は脳に効くものなんです。脳には異物を排除する「脳関門」というバリア機構があって、普通の薬剤は脳に入らないようになっています。アルコールのように小さい分子のものは脳に入って、酔っ払ったりするんですが、たいていは脳に行かない。ヘルペスや風邪、日本脳炎などのウイルスは小さいので、ウイルス性脳炎を発症、死に至ることもあるんです。
石丸 ふむふむ。
池田 脳内物質に近い構造を持っている薬物は、分子が大きくても脳に入り込めるんですよ。モルヒネやコカインなどはそういう薬物なんだけれど、そのために幻覚などさまざまな作用がある。脳内麻薬という言葉がありますが、もともと人間にはそういう作用のある脳内物質を作り出す能力があって、モルヒネやコカインはそれに近い物質なんです。
石丸 なるほど。
高樹 南米にアヤワスカという植物があって、ハルマリンという向精神性物質は人間が死ぬときに分泌する脳内物質に近いものだと聞いたことがあります。もともと、人間には「エンド・カンビノイド・システム」という身体調節機能が備わっていて、そのことには科学的エビデンスもありますからね。
石丸 へええ。凄いなあ。
池田 大麻の成分であるカンノビノイドにはものすごくたくさんの種類があって、それぞれ効果が少しずつ違うんですが、アメリカやイスラエルほか海外では研究が進んでいます。それで、さまざまな薬剤が研究、開発されていて、特許も認められているけれど、日本では大麻取締法では研究も一切、禁止されている。なので、いざ、医療大麻解禁となったときに、高額なパテント料を支払わなければなるわけです。だから、せめて研究くらいはできるようにしたほうがいいんですれどね。
高樹 そうなんです。悪法のために、将来、日本国民は大きな損害を受ける。それに、日本では島津製作所が超高性能のカンビノイド分析器を開発。アメリカなどの研究機関で活用されていますけれど、悪法があるために、日本では使うことができない。
池田 新型コロナのPCR検査でも、日本で開発された「全自動PCR検査システム」の認可が遅れて、日本で使えないというよくわからないことがありました。ボクはある研究所の評議員をしているんですが、医療大麻には将来性があるから、日本での研究は無理なら、アメリカで研究を進めたほうがいいとアドバイスしたんですが、冷笑されました(笑)。
高樹 日本はどんどん遅れていくばかりですよね
石丸 今日は先生のお話を通して――大麻取締法のような悪法でも法律に従いつつ、しかしながら、悪法の改正・停止・廃止・失効を訴えていくべきだというお考えをよく理解できました。そして、それが日本、世のなかを変えていくことにつながる、という期待を持ちました。最後に若い人たちへのメッセージをお願いします。
池田 世のなかのマジョリティ(=多数派)の意見はすべて正しいと信じ込んでいる若い人が増えている気がします。しかし、マイノリティ(=少数派)の意見も軽視せずに、ともにエビデンスをよく調べて、自分の頭でよく考えてほしい。メジャーな意見が必ずしも正しいわけではありませんからね。
高樹 はい。
池田 最近では、たとえば「地球温暖化で台風の発生数が増えて、大型化している」とメディアでよく報じられます。しかし、そんなことはない。と、ボクがそう言うと、エビデンスを示せ! と食ってかかってくる連中がいる。しかし、そんなエビデンスは気象庁のホームページを調べれば一目瞭然、問わず語りなことなんですよ。マジョリティな言説を信じる人は、自分でエビデンスを調べようとしない。それでいて、マイノリティの意見を小馬鹿にするんだけれど、実はマイノリティな意見を持つ人のほうが、よっぽどエビデンスを調べて、はるかに深い知識、知見を持っていて、自分の頭で考えているんです。大麻についても同じことが起きている。
高樹 確かに、大麻=「ダメ、ゼッタイ。」で思考停止している人がものすごく多いですよね。
池田 自分で考えることを放棄したら、世のなかも自分自身もいい方向に変わっていきません。最近の風潮としては、「速く、多数派に認められる正解を導き出す」ことが正しいとされていて、メディアやネットは常に“正解”を求めている。でも、正解がわかりやすい問題なんて、おもしろくないでしょう。右か左か正解がわからないなか、自分できちんと調べて、考えて、方向を決めていく。そういうプロセスが人類を進化させてきたし、生きている楽しみもある。とにかく、自分の頭で考えてほしい。
高樹 今日はありがとうございました。
――そういうわけで今回の高樹沙耶は、日本の知識を招き縦横無尽に大麻と社会を対話した。高樹沙耶は大麻についてだけ語っているのではない。自分自身で思考することや自由な発想で未来を想像することは、日本社会を明るくする。その可能性を語っているのだ。また次回!
●池田清彦(いけだ・きよひこ)
1947年7月14日、東京都生まれ。生物学者・評論家・理学博士。早稲田大学名誉教授、山梨大学名誉教授、TAKAO599MUSEUM名誉館長。東京教育大学理学部卒業、東京都立大学大学院理学研究科博士課程修了。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ)にコメンテーターとしてレギュラー出演するなど、さまざまなメディアでも活躍している。著書、共編著、翻訳書、多数
Twitter: @IkedaKiyohiko
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◎高樹沙耶(たかぎ・さや)
1963年8月21日、静岡県生まれ。元女優、元作詞家、石垣島のキャンピングロッジ 「虹の豆」オーナー。1983年に主演映画『沙耶のいる透視図』で女優デビュー、映画&ドラマシリーズ『相棒』ほか、数多くの作品に出演、人気を呼ぶ。著書に『贅沢な暮らし—衣食住が育む「心のラグジュアリー」』(エクスナレッジ)、『ホーリープラント 聖なる暮らし』(明窓出版)ほか
Twitter: @ikuemiroku
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