以前、TOCANAでインタビューした写真家、初沢亜利さんが、写真集『東京、コロナ禍。』(柏書房)を刊行した。(9月26日まで、赤坂のバー「山﨑文庫」で展示も開催中)
新型コロナウイルスの脅威が日本国内で急速に広がったの2月から、緊急事態宣言の発令、解除を経て人出が戻り始めた7月頭までの、およそ半年間の東京の様子を撮影した写真集だ。
ニュースの現場から人知れぬ路地の奥まで、ステイホームの声がかまびすしいなか、臆することなく足で稼いだ写真には、ヒステリックなマスコミ報道からは見えてこない、コロナ禍の東京人の生活が写っている。地方の人だけでなく、外出を自粛していた東京在住者が見ることのなかった光景もある。
現在、東京・赤坂の山﨑文庫で写真展を開催中の初沢さんに、撮影の経緯から撮ることを通して見えてきたことまで、話を聞いた。
▪︎東京を撮り始めたらコロナ禍に巻き込まれた
ーー撮影から写真集刊行までの経緯を教えてください。
初沢亜利さん(以下、初沢) 写真家になってからイラクや北朝鮮、震災後の東北や沖縄といった外部をずっと回ってきたのですが、2015、6年頃から「6歳から暮らしている東京を見つめ直す必要があるんじゃないか?」と考えていました。それで、オリンピックイヤーをきっかけに少しずつ東京の街を歩いて写真を撮り始めたのが2020年の年明け。すでに武漢のニュースが毎日のように伝わってきていたので、様子を見ていたら、2月に入ってダイヤモンド・プリンセス号の集団感染が起きた。そのあたりからコロナ禍に入って行ったんです。
その時期、多くの写真家やカメラマンが自粛を始めていたんだけれど、僕は街に出て写真を撮っていた。だから、コロナ禍を撮ろうとしたというよりも、2020年上半期の東京を撮ったら、結果的にコロナ禍の写真になった。撮影のウェイトは東京を撮ることにありました。