時間が逆行するパラレルワールドは本当に実在か!? NASAの観測結果に科学界困惑、この世はリアル「TENET」だった可能性
パラレルワールドは存在するのか。今年半ば、NASAが南極でパラレルワールドが存在する証拠となる現象を特定したとして大きな話題になったのだが……。
■「ANITA」が南極で検知したパラレルワールドの“証拠”
今年5月、NASAの南極衝撃過渡アンテナ「ANITA」が、地球の中から飛び出してきた粒子「タウニュートリノ(tau neutrinos)」を検知し、この振る舞いがパラレルワールド(パラレルユニバース)が存在することの証拠になるとして各メディアが報じ大きな話題となった。
タウニュートリノなどの高エネルギーの粒子が降ってきても地球を通過することは考えられず、地表から“上へと”飛び出してくることなどあり得ないのだが、これは時間が逆行しているパラレルワールドから来たのだと考えれば説明がつくというのである。
宇宙を生み出したビッグバンによって、実は我々が今いる宇宙ともう1つの宇宙であるパラレルワールドが生み出され、この2つの宇宙は時間を含めてすべてが“反対”であるという。つまりパラレルワールドは“反対宇宙”であるというのだ。
パラレルワールドが存在するという、何かと夢が広がる話であるのだが、もっと慎重になるようにという声も少なからずあるようだ。
豪・クイーンズランド大学の宇宙粒子現象学者パット・スコット氏は「パラレルユニバースの検出に必要なものは何もありません」と説明し、この異常なANITAによる検出を説明できる理論はほかにも多くあることを示唆している。
こうした言い分を要約すると実に単純明快で、つまりニュートリノについてはまだまだわからないことが多く、天体物理学者や科学者は現在進行形で研究を続けているという事実があるというだけだ。
豪・カーティン大学の電波天文学者であるクランシー・ジェームズ氏は「そこに発見されるべき新しい物理学があることを絶対に確信しています」としている。
話をパラレルワールドにまで飛躍させるのは少し行き過ぎであり、ANITAが検出したものを説明できる“トンデモ”ではない理論もたくさんあるという。
「ANITAの結果を説明できる可能性のある候補となる粒子はたくさんあります。ANITA信号について議論するとき、パラレルユニバースはエキサイティングでセクシーに聞こえますが、代替案はまだまだ検討されています」と、シドニー大学の天体物理学者ジェラント・ルイス氏は語る。
もちろん“パラレルワールド実在説”が頭から間違っていると否定しているのではなく、その前に検討すべき理論は数多くあるということだ。コロナ禍の中で明るい夢のある話題を提供したい気持ちもわからなくはないが、ANITAが検知した異常をパラレルワールドに結びつけてしまうのは勇み足のそしりを免れないのかもしれない。
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