人間の孤独と罪悪感が実体化するホラー映画『ダーク・アンド・ウィケッド』がとにかくリアルに怖すぎてヤバい!

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 暗い暗い闇の中で熟成された“恐怖の塊”がいくつもいくつも投下される――。この作品を最後まで見るにはかなりの覚悟が必要かもしれない。「もう見たくない……」そんな風に思ったホラー映画は久しぶりだ。11月26日(金) 新宿シネマカリテほか全国公開される映画『ダーク・アンド・ウィケッド』がかなり精神的にしんどい映画だったことは否めない。静かな緊張感ととてつもない暗さと不安。駆り立てられる罪悪感と断続的に放り込まれる恐怖。「くるぞくるぞ……」とわかっているにもかかわらず、心底怖いのだ。

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◆孤独が実体化する恐怖のストーリー

 物語は、テキサス州サーバーの遠隔地にある農場で、何年も寝たきりになっている父親を介護する母、そしていよいよ父が最期を迎えるかもしれないと悟った子供たちが久々に故郷を訪れるシーンから始まる。人間が集う中心地からは遠く隔離された平らな荒野にポツンと点在する農場と、そこで飼われている山羊たち。夜になると完璧な暗闇が訪れる僻地で、子どもたちとも疎遠になり、長い間孤独にさらされ続けた二人の老夫婦が神にすら見放されていたことを、子供たちはまだ知らない。2人の孤独と不安は、いつのまにか実体化し、魔となって家を巣食っていたのだった。

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◆日常生活を侵食するもの

 長いコロナ禍を経験し、“外部との断絶”が及ぼす初めての孤独を味わった人も多いことだろう。孤独による自殺者も多かったと聞く。

 筆者も緊急事態宣言中、夫と二人きりの生活が続き、外出もせず、毎日同じ顔と同じ声、そして同じ作業が繰り返されるうちに心の動きが一部完全停止してしまったかのような、これまでに体験したことのない新しい孤独感を味わった。呼吸しているのに生きている実感がわかない苦しさ。不穏な影が家全体を覆いこむような先の見えない不安と確実に蓄積されるストレス……そんな経験もあったからか、『ダーク・アンド・ウィケッド』はフィクションでありながら実にリアルで、ありえそうな怪異なのだ。特に、本作の最初の恐怖シーンでもある母親がニンジンを切る場面は、極限のイラつきと不安が一気に噴き出す重要なカットであり、誰でも共感できるリアリティと、グロテスクなフィクションの間をついた、圧巻の演出だったと思う。ここから始まる行きつく間もないほどの恐怖を飾るにふさわしい冒頭だった。

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◆実際に起こり得る『ダーク・アンド・ウィケッド』現象


 トカナでは何度かチベット仏教に伝わる奥義「タルパ」を紹介しているが、タルパは応身という意味で、思念が形態化する現象だ。これまでに、何人もの高僧がこの「タルパ」を実現させてきたといわれており、多くの仏教学者もこの現象を「本当にある」と認めている。

『ダーク・アンド・ウィケッド』はもちろんキリスト教ベースのホラー映画ではあるが、トカナを編集している身としてはこんな仮説も立てられるのではないかと考えた。

 寝たきりの父親は仮死状態で、特殊な脳波の中、現実と黄泉の世界の間をさまよっている。そんな中、ある特定の脳波(編成意識状態)において実現されやすい「タルパ」が発動し、老夫婦の孤独と、子供の罪悪感を一気に形態化して「魔」が誕生したのではないだろうか。ありえないことはない。だから『ダーク・アンド・ウィケッド』は本当に怖い、ありえるのだ。

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 筆者は、緊急事態が明けて忙しい日常が戻る中、未だコロナ感染から身を守るため、外出を控えめにしている両親の状態が非常に気になった。手遅れにならないうちに親孝行をしないと“とんでもない魔”がやってくるのではないか。そんな教訓も受け取りつつ、本作の恐ろしい余韻を今も引きずっている。


『ダーク・アンド・ウィケッド』
11月26日(金) 新宿シネマカリテほか 全国ロードショー

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監督・脚本・製作:ブライアン・ベルティノ『ストレンジャーズ/戦慄の訪問者』
音楽:トム・シュレーダー
撮影:トリスタン・ネイビー
編集:ウィリアム・ブーデル、ザカリー・ワイントローブ
出演:マリン・アイルランド『アイリッシュマン』『最後の追跡』
マイケル・アボット・Jr『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』
ザンダー・バークレイ『96時間』
ジュリー・オリバー・タッチストーン
マイケル・ザグスト

2020年/アメリカ/カラー/95分/シネマスコープ/英語/5.1ch
原題:THE DARK AND THE WICKED/レイティング:PG12/字幕翻訳:本庄由香里
配給:クロックワークス

▼公式サイト
https://klockworx-v.com/dark-wicked/

TOCANA編集部

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