可愛くも不気味な巨大動物彫刻作品がズラリ! 日常に立ち現れる精霊たちに架空の動物の形態を与える現代美術家・石塚隆則の巨大個展開催

展示会場のガレージにズラリと並ぶ巨大動物彫刻作品群

 大きな丸太を彫り削ることから生まれる巨大動物彫刻のインパクトで、国内外から注目されている現代美術家・石塚隆則の過去20年間に渡るおよそ100点近くの作品を集大成した展覧会「Hide And Seek | kakurenbo 石塚 隆則」展が開催中(ふわりの森にて、11月15日まで、うち8日~11日は休館)である。

 石塚隆則といえば、とにかく、彫刻作品の重量感が凄まじく、木彫のリアルな質感は可愛さのなかに不気味さを合わせ持つ、独特のアウラを放っている。

 本展の見どころはなんといっても、石塚隆則のこれまでの創作活動の代表作を中心に、巨大彫刻、毛皮やフェイクファーを用いたファブリック作品、絵画、ドローイングなど、異なる表現方法による作品群を同時に鑑賞できることにある。それらを通じて、改めて、彼の創作のプロセスやそれぞれの作品の有機的なつながりを発見し、可愛いだけでない彼の作品の本性に触れることができるのだ。

《GA(Big MAMA)》2012

「今回の展示のきっかけは、今年1月、自分の作家活動20周年を記念して制作した過去作品を集めたブックレットでした。作品の実物を皆さんに見てもらいたいと思っていたところに『ふわりの森』からのオファーが舞い込み、展覧会が実現しました」と、石塚は語る。

《うつぼ舟》2014、《soloesシリーズ》2009

 本展の会場となる「ふわりの森」は、豊かな自然を残す千葉県成田市にあり、普段はアーティストの滞在制作の場として運営されている。今回は、母屋の日本家屋、巨大なガレージ、蔵などを余すことなく展示スペースとして使うことで、石塚にとっても過去最大規模となる個展となった。ちなみに、最寄駅である下総松崎駅近くのカフェ「artcafe TOAST AND HONEY 」がチケット販売所で、そこにも展示がある。また、車で来場の際は、会場への乗り入れはできないので、このカフェの駐車スペースなどを利用することとなる。

《Bright Future -Nuclear core》2016

 展示会場のメインとなる大型ガレージには、石塚自慢の巨大動物彫刻作品がズラリと並ぶ。過去の代表作のほとんどは一回しか展示していないとのことで、作品の実物と対峙できる貴重なチャンスとなっている。それらの動物たちについて、石塚は「日常に立ち現れる精霊たちに動物に似た形態を与えている」と説明する。

《白い恋人たち ~白泥で塗り固めた舞台でムグロ・ヘコブする 》2003
《白い恋人たち》の展示風景
《ねむりと死~家族》2017

 フロント両サイドには各2匹ずつの首長動物が鋭い眼光を放っており、中央奥に直立するクマに似た動物は、複数の乳房を持つ母親で、両手に逆さま立ちの尾の長い哺乳類を持つ。その背後には、石塚が“白い子たち”と呼ぶクリクリ目玉の白い哺乳類のキャラクターが雲に乗って楽器を奏でている。“白い子たち”が複数で横たわる作品では、その安らかな表情から至福の眠りを貪っているように見えるが、世界大戦の空襲による折り重なる死体写真から着想したことを聞かされると、同じ作品も全く別の見方が求められていく。

石塚隆則

 石塚の作品の謎解きは、ひとつには絵画作品にある。本展では、蔵の2階にある広い和室2つが絵画作品の展示スペースとなっている。1970年生まれの石塚は、当初は横尾忠則、のちに岡本太郎らに大いに触発され、絵画作品をメインとして作家活動をスタートさせた。その段階ですでに擬人化した動物をモチーフとする表現スタイルを確立していた。だが、巨大彫刻作品の作家へと大きく転身していくプロセスには、架空の哺乳類“白い恋人たち”の創出というもうひとつの飛躍があった。

 母屋の日本家屋に《白い恋人たち》のインスタレーションがある。その作品について、石塚は海外でのリサーチから大きなインスピレーションを受けたと語っている。

「2002年に4ヵ月ほど欧州を旅し、ロンドンでは19世紀の博物学的コレクションを所蔵する『サー・ジョン・ソーンズ美術館』、パリでは動物の剥製や骨格の膨大なコレクションが素晴らしい『パリ自然史博物館』に感銘を受けました。そこでは、美術品も骨董も生物標本も、分類整理することなく、珍しいものがごちゃ混ぜに展示されていて、美術館と博物館が未分化で、ヴンダーカンマーやキャビネット・オブ・キュリオシティと呼ばれていた時代の名残があったんです」と石塚は語り、そこで体感した作品の迫力や物量の多さで畳み掛けてくるものこそが彼の目指すところとなったのだと強調した。

《すもう》2021

 本展で展示されている《白い恋人たち》は、石塚自身が創出した架空の哺乳類“白い恋人たち”をうさぎの毛皮を使って、剥製のような作品に仕上げている。本展での作品の解説にはこうある。

「新しく発見された哺乳類“白い恋人たち” 学名:Albusamatoris Candidus(マルバスアマトリス コンディデュス)身長:約45 cm 体重:約2~2.5kg  尾長(陰茎長):約20~25 cm(中略)哺乳類では珍しい二足歩行の種類で、さらに尾に見えるものはその先から精子を放出し、排泄腔に子宮を有した生殖器官が存在しています。つまり、単体で雄雌の機能を持った完全両性具有類なのです。また、交尾を中心とした社会性をもっており、大変興味深い進化をとげた生物として注目を集めています」

 展示のキービジュアルにもなっている3匹の“白い恋人たち”が手を繋いで尾を放射状に伸ばしている様子は、交尾のための求愛のダンスとも説明されている。

《かぐら》2021

 2004年に水戸芸術館からのオファーで制作された《白い恋人たち》のインスタレーションでは、巨大ジオラマが制作され、架空の動物をまるで実在するもののように剥製にし、骨格を考え、生態や特徴まで創作していた。その路線から離れたのは、剥製の材料になる毛皮を取るため、うさぎの命を犠牲にしなければならなかったことや、科学の領域に立ち入るよりも自分の創作へのイマジネーションを作品自体にぶつけていきたかったからという。

 そこから巨大な木彫り彫刻作品が作られるようになっていく。その記念すべき第一作目は、2年掛かりで制作された全長5メートル50センチのトーテム・ポールである。本展では、蔵に横置きで展示されている。

《大マスク》2013

 その後、木を彫る喜びを発見した石塚は、ひたすら制作に没頭し、石塚ワールドを確立していくこととなる。可愛いだけじゃない、石塚隆則の作品群に対峙するために、遠足気分で出かけてみてはいかがだろうか。

 

【展示情報】
ふわりの森 “Discovery” ART WITH AIRPORT CITY &TOWN
「Hide And Seek | kakurenbo 石塚 隆則」展

開催期間
開催中 ~ 11月7日(日)+12日(金)、13日(土)、14日(日)
月~木 12:00 -17:00 ※最終入館16:30
金・土 12:00 – 20:00 (17:00 – 20:00 ナイトミュージアム) ※最終入館19:30
日・祝日 10:00 -17:00 ※最終入館16:30

会場
ふわりの森 | ARTSTAY maison Fuwari
千葉県成田市大竹1093
JR 成田線下総松崎駅改札より徒歩5分(500m)

料金
一般 500円(学生300円 *中学生まで無料)
※公式HPからオンライン販売

または

※チケット販売会場(こちらにも展示あり)

artcafe TOAST AND HONEY

千葉県成田市大竹295
JR 成田線下総松崎駅改札より直進30秒、会場まで徒歩5分

公式HP 
https://www.fuwarinomoriart.jp/discovery/

 

主催
ふわりの森アートプロジェクト

■助成

文化庁・ARTS for the future!

休廊日

会期中無休(11月8日-11日は休館)

 

【石塚隆則プロフィール】
現代美術家。1970年神奈川県生まれ。現実にありながら見えない「もの」や「こと」を動物キャラクターにして彫刻やドローイング、絵画などで表現し、国内外で高く評価されている。主な展覧会に、「飛天」(ROPPONGI HILLS A/D GALLER、2018)、「ねむりと死」(un petit GARAGE、2017)、かけがわ茶エンナーレ(2017)、 「けものアパートメント」(ヨコハマアパートメント、2015)、「totem」(nca | nichido contemporary art、2014)がある。作品は東京都現代美術館、笠間日動美術館にも所蔵されている。

文・写真=ケロッピー前田

ケロッピー前田(けろっぴー・まえだ) 

1965年、東京都生まれ。千葉大学工学部卒、白夜書房(のちにコアマガジン)を経てフリーに。世界のカウンターカルチャーを現場レポート、若者向けカルチャー誌『BURST』(白夜書房/コアマガジン)などで活躍し、海外の身体改造の最前線を日本に紹介してきた。その活動は地上波の人気テレビ番組でも取り上げられ話題となる。著書に『クレイジートリップ』(三才ブックス)、『クレイジーカルチャー紀行』(KADOKAWA)、責任編集『バースト・ジェネレーション』(東京キララ社)など。新刊本『縄文時代にタトゥーはあったのか』(国書刊行会)絶賛発売中!

公式twitter:@keroppymaeda

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