教育か、冒涜か… 史上最悪のカルト集団自殺の地「ジョーンズタウン」を巡るツアーに生存者たちの怒りが爆発

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The Jonestown Institute, http://jonestown.sdsu.edu/, Attribution, リンクによる

 1978年、900人以上の信者が集団自殺(実質的には大量殺人)を遂げた、カルト教団「人民寺院」。その凄惨な事件の舞台となった南米ガイアナの「ジョーンズタウン」が、今、観光地として公開され、大きな波紋を広げている。

 現地の旅行会社が、750ドルのパッケージツアーの一部としてこの悲劇の地への訪問を企画。「ダークツーリズム」と呼ばれる、歴史的な悲劇の現場を訪れる旅の一環として注目を集めているが、その手法をめぐって激しい賛否両論が巻き起こっているのだ。

「悲劇を食い物にする金儲けだ」生存者たちの怒り

 この観光地化に、最も強く反発しているのは、あの地獄を生き延びた人々だ。

 事件で母親や5人の兄弟を含む11人の家族を失った生存者、ジョン・コブ氏は、このツアーを「悲劇を食い物にする金儲けだ」と痛烈に批判する。また、事件当時のガイアナ政府報道官だったキット・ナシメント氏も、「風化しかけたイメージをわざわざ蒸し返すだけだ」と冷ややかだ。彼は、この事件を「ガイアナの土地でたまたま起きたアメリカの悲劇」と位置づけ、「私たちが世界にカルトの危険性を教える特別な責任があるとは思わない」と語る。

 彼らの言葉は単なる反対意見ではない。あまりにも大きな傷跡を残した悲劇の記憶が、安易な商業主義によって歪められることへの魂からの叫びなのである。

地上の楽園から地獄へ – ジョーンズタウンの悲劇とは

 そもそも「ジョーンズタウン」とは何だったのか。

 教祖ジム・ジョーンズは、1970年代、「人種差別なき理想郷」を掲げ、何百人もの信者を引き連れてガイアナのジャングル奥深くに共同体を設立した。信者たちは「人民寺院」と呼ばれるこの共同体で自給自足の生活を送るはずだった。

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教祖ジム・ジョーンズ Nancy Wong投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

 しかし、その実態は楽園とはほど遠い。信者たちは全財産やパスポートを取り上げられ、1日に12時間もの過酷な労働を強いられた。ジョーンズの独裁と支配がすべてだったのだ。

 1978年11月、信者の親族からの虐待報告を受け、アメリカの下院議員レオ・ライアン氏が調査のために現地を訪問。一部の信者が脱出を試みたことをきっかけに事態は最悪の結末を迎える。ジョーンズはライアン議員一行に発砲し、議員を含む5人を殺害。そして、「もはやこれまでだ」と悟った彼は、武装した見張りの下で、信者たちにシアン化合物(青酸カリ)を混ぜたパンチ(フルーツジュースなどを混ぜた飲み物を飲むよう命令した。

 この日、子供304人を含む913人が命を落とした。これは自殺というより、狂気の独裁者が引き起こした大量殺人事件だった。

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ジョーンズタウンの家並み(1979年撮影 Photo by Fielding McGehee and Rebecca Moore, via The Jonestown Report (CC BY-SA 3.0) [Source]

教育か冒涜か – 「ダークツーリズム」が問うもの

 もちろん、ツアーを企画した会社にも言い分はある。会社のオーナーは「扇情主義が目的ではない」と主張。「人々を操る手口や、野放しにされた権力がもたらす危険性について、訪問者に学んでもらうことが目的だ」と語る。

 確かに、アウシュヴィッツ強制収容所跡地やローマのコロッセオなど、死と悲劇の歴史を持つ場所が観光地となっている例は世界中に存在する。これらは「ダークツーリズム」と呼ばれ、歴史を学ぶ上で重要な役割を果たすこともある。

 では、なぜジョーンズタウンの観光地化は、これほど強い反発を招くのだろうか。それは、事件の記憶があまりにも生々しく、生存者が今も苦しみの中にいるからかもしれない。そして何より、750ドルという具体的な金額が、「教育」という大義名分を薄め、「金儲け」という批判を加速させているのだろう。

 悲劇の記憶をどう継承し後世に伝えていくべきか。この重い問いに簡単な答えはないだろう。ジョーンズタウンの静かな大地は今も私たちに静かに問いかけ続けている。

参考:Daily Star、ほか

TOCANA編集部

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