「我々は15秒前の世界を生きている」衝撃の事実発覚! 脳は人間を過去に送り続けるタイムマシン

 脳はわれわれを15秒前に送り続けるタイムマシンであるということが最新の研究で判明したという。「The Conversation」(1月26日付)が報じている。

 英アバディーン大学の心理学者マウロ・マナッシ助教授と米カリフォルニア大学バークレー校心理学部のデイヴィッド・ホイットニー教授らによると、脳は15秒ごとに入力される視覚情報を、日常生活に支障がないように1つの印象にまとめてくれるアプリケーションのようなものだという。視覚的なスナップショットをひとつひとつ分析するのではなく、過去15秒間に見たものの平均値をまとめ、安定した情報を認識するように仕向けていると説明している。われわれは「過去」に生きているから、時間が経つにつれて起こる微妙な変化に気づかないという。

 そのことは実験によっても確かめられている。数百人の被験者に30秒のタイムラプス動画の中で年代順に変化していく顔のクローズアップを見せ、「動画の最後に表示された顔の年齢」を答えさせたところ、ほぼ一貫して15秒前に表示されていた顔の年齢を答えたという。

 教授らによると、脳がしていることは本質的には”先延ばし”であり、受け取ったスナップショットをすべて処理するのは大変なため、脳は過去の情報に固執するのだという。その方が効率的で速く、作業量も少なくて済むという経済的な理由からだ。

 こうした脳の情報処理方法は良い面と悪い面があるという。良い面は視覚的な情報が氾濫するのを防ぐことだ。もし脳が常にリアルタイムで更新されていたら、世界は光や影、動きが常に変動する混沌とした場所のように感じられ、常に幻覚を見ているような感覚に陥るという。一方、悪い面は、たとえば、何百枚ものレントゲン写真を見る放射線技師や臨床医は、現在の画像だけでなく、以前に見た画像にも基づいて判断をしていることが判明しており、第一印象にとらわれて過去に引きずられ、すぐには変化がわからなくなってしまうということだという。

 ただ、後者に関しては人工知能(AI)の読影能力が高まることで回避できるだろう。そもそも脳がリアルタイムで視覚情報をだだ流しにしていたら、およそ認識というものは不可能になってしまう恐れがある。認識対象の同定ができなければ、モノの命名さえできない。

 ところで、こうした脳の機能に100年ほど前に気づいていたドイツの哲学者エトムント・フッサールは、脳が過去に基づいて情報を処理してくれなければ、視覚情報だけでなく、聴覚情報も不可能になると指摘している。フッサールは、時間の分析を通して、我々の認識が成立するためには、現に起こっている現象の少し前の出来事を無意識に覚えている過去把持と、これから起こることを予期している未来予持という能力が不可欠だと考えた。

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