“誰にも見えない友達”がいた… オカルト現象が起きる稽古場オーナー横澤丈二の心霊体験

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僕が彼女の方を見てみると、いつの間にか彼女は共同トイレの方にスタスタと走っていき、今考えると不思議なのだが、スッと扉を開けることもなく消えていったのだ。

僕「あれ? トイレの方に消えちゃった」

僕がそう言った瞬間、母の顔がすごく困った顔をしていたことを今でも鮮明に覚えている。それから、同じことが何日か続いたある日のこと。母が心配になって2歳の僕をかなり大きな病院に連れて行った。恐らく精神科があった病院だったのだろう。そこで先生が言った言葉まで覚えているから不思議でならない。

医者「お母さん、なるべく夜にご主人が見ている深夜の東京12チャンネルでやっている(今のテレビ東京)フランケンシュタインだとか、吸血鬼ドラキュラなどをお子さんに見せないようにしてください」

母「やはり、そういうのに影響されてしまうのでしょうか?」

医者「予想ですが、怖い怖いと思っていながらも、そういうものが実際にいると信じ込んんでしまうと昼夜問わず、“こういう子が居てくれたらいいな”という妄想で人物を作り上げてしまう…心の病なのかもしれません。ですので、なるべくそういうのは控えていただけたらと思います」

母「それだけで治るものでしょうか?」

医者「いや、それはなんとも言えませんね…。まぁ、そういうものをしばらくの間は見ないようにしてください。それでもお子さんの症状が変わらなければ、また病院にいらしてください」

 父は、小さい僕が怖がりながらも楽しそうに見る姿が嬉しかったのだろう。当時、イギリスのハマー・フィルム・プロダクションが作った映画、ピーター・カッシング主演のフランケンシュタインシリーズ、それとクリストファー・リー主演の吸血鬼ドラキュラシリーズなどが、夜遅くに東京12チャンネルでやっていて、それを僕と一緒に見ることが日課になっていたのだ。先生の言葉に僕は非常にがっかりした…。父と怖い映画をテレビで一緒に見る楽しみがなくなってしまったのだ…。落ち込んでいる僕にどこかお茶目な父は「今日ぐらいはいいんじゃないか?」と言いつつ、1週間に一、二回は見せてくれた記憶がある。というのは、結局テレビを見ない日が続いていても毎日水場にはその赤い女の子がおままごとをしに現れるからである。心配性の母は、また僕を病院に連れて行き、今度はその先生ではなく、別の先生に診てもらったり、脳神経外科にまで行き脳波を測ることにまでなったのだった。これはある程度大きくなってから母に聞いた話だが、何故脳波まで測ったのかというと、脳波に異常をきたして、そういうものが見えるのではないかと精神科の先生に言われたからだという。ただ、脳波を測っても何の異常もなく、当時はMRIなどの最新機器もなかったので、そこで診療は終わった。それが理由で、そのアパートを後に引っ越すことになるのだが、その引っ越す日も僕は鮮明に覚えている。

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