“何もかも止まった”村に迷い込んだ3人は…! 強烈な違和感と静寂、任務中の兵士が体験した本物のタイムスリップ

 カージー村で最も有名な建物である教会塔がないというのはどういことなのか? そして住民はどこへ行ってしまったのか? この時点で、3人はきわめて不吉で漠然とした恐怖感に襲われ、散策は中止してできるだけ早くこの村を出ることにしたのだった。

 村を出るとすぐにすべてが突然、“正常”に戻った。鐘が再び鳴り響き、鳥が歌い、秋のさわやかな風が頬を撫で、木々から葉が落ち、煙突が再び煙を吐き出した。教会塔もそびえ立っていたのだ。

 3人の士官候補生は驚くばかりで、いったい何が起こったのかまったく理解することができなかった。上官のもとへ行き、任務を終了したことを報告したが、カーシー村の異常は説明できないままであった。

 時を経て1980年代、心霊現象研究協会の超常現象研究者であるアンドリュー・マッケンジーは、当時の士官候補生であったラングとクロウリーから手紙を受け取った。この時になって彼らは初めてあの時の体験を専門家に伝えてみることにしたのである。

 興味をそそられたマッケンジーは実際に彼らと面会し、一緒に村にも足を運んだ。そして詳細を知れば知るほど、マッケンジーは奇妙なことがここで本当に起こったと確信するようになった。その時、彼らはここで過去へとタイムスリップしたと考えられるというのである。

 マッケンジーをもっとも驚かせたのは、タイムスリップした時代が歴史的に正確であったことだ。たとえば、牛の死骸のあった建物は1957年時点では個人の住居であったが、歴史的資料を紐解くとかつて確かに精肉店であった。町のレイアウトに関する他の観察結果も、士官候補生が知り得るはずのない歴史的記録と一致していたのだ。

 マッケンジーは彼らがタイムスリップしたのは1400年代初頭であると結論づけた。その時代、村にはまだ教会塔はなく、黒死病(ペスト)の流行によって村の人口は著しく減少し、経済活動は止まっていたのである。

 マッケンジーは本件に非常に感銘を受け、他のタイムスリップの事例も研究してまとめあげ、1997年にタイムスリップに関する著書『Adventures in Time』を出版した。

 タイムスリップ説を疑問視する声もあるのだが、当時の彼らが体験したことを科学的に知る術はない。しかしこのケースが示唆しているのは、実はタイムスリップは我々の身近にあり、気づくにせよ気づかないにせよ、ごく普通に起きている現象であるということかもしれない。足を踏み入れた瞬間に「何かが違う」と感じることがあった場合、タイムスリップを疑ってみてもよさそうだ。

参考:「Mysterious Universe」、ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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