24の元機密資料から見るアメリカの実像! ミライ村虐殺事件、ホライズン計画、マピニサイレントゾーン(中編)

 機密指定が解除された政府文書からかつてのアメリカの実像が浮かび上がってくる――。空飛ぶ円盤についての報告書からマインドコントロール実験まで多岐に及ぶこれらの文書だが、はたして東西冷戦時代のアメリカは何を考え、何を必要とし、何を恐れていたのか。24の機密指定解除文書から仄見える冷戦下のアメリカの実像とは。中編ではNATOの極秘軍隊や失われた核爆弾などの隠蔽が明るみになる。

グラディオ作戦

 冷戦中、北大西洋条約機構(NATO)は、ソ連による侵攻のケースに備えてヨーロッパの守りを固めるための数々の秘密計画を策定した。

 機密解除された文書によると「グラディオ作戦(Operation Gladio)」として知られるこの計画は、イタリア、ベルギー、フランスを含む多くのNATO諸国が極秘の陸軍を編成し各国と連携して常に戦闘配備下に置くことを柱としていた。

 秘密の軍隊の任務は単純で、潜在的な共産主義者の乗っ取りに備え、そのような乗っ取りが発生した場合に速やかに武力によって鎮圧することであった。一部の国ではソ連による侵攻の準備には、スパイ活動や弾薬の買いだめが含まれていた。

 また作戦の矛先は一般市民にも向けられ、極左勢力を装った無差別テロ事件を首謀したともいわれている。

 そしてこれらの秘密の軍隊は、東側に秘密にされただけではなく、国の政府高官すら軍隊の存在を知らない場合があった。当時のイタリア首相であった故ジュリオ・アンドレオッティは1990年に冷戦期のイタリアに存在していた秘密の軍隊に関する情報をNATO加盟国のリーダーとして初めて公言した。

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ジュリオ・アンドレオッティ(1919-2013) 画像は「Wikipedia」より

ミライ村虐殺事件

 ベトナム戦争下の1968年3月、南ベトナムのミライ村(ソンミ村ミライ集落)で少なくとも300人の女性、子ども、高齢者が残酷な手段で殺害された。機密解除された文書によれば、犯行に及んだのは米軍兵士である。

 1969年11月にAP通信の調査ジャーナリストがこの残虐行為について報じ、世論を揺るがす大問題に発展した。それまでの1年間、陸軍当局はこの虐殺を必死になって隠蔽していたことが明らかになっている。

 調査の結果、14人の米陸軍士官が刑事告発され、そのうちの1人を除いて全員が無罪となっている。

 この「ミライ村虐殺事件(My Lai Massacre)」をきっかけに、国防総省はベトナム戦争犯罪作業部会として知られるタスクフォースを設立し、ミライ村虐殺事件に類似した事件を調査した。この作業部会はベトナム戦争中の米軍による犯罪を詳述した9000ページ以上の文書を編集し、その多くは1990年代に機密解除されている。

ウォッシュタブ作戦

 冷戦中はNATO各国だけでなくアメリカ本国にも秘密の軍隊が存在していたことが明らかになっている。2014年、米空軍と連邦捜査局(FBI)の機密解除された文書により、1950年に「アラスカでの秘密の諜報活動と回避および逃亡作戦」のために考案された計画の存在が明るみに出た。

「ウォッシュタブ作戦(Operation Washtub)」と呼ばれるこの計画では、アラスカにソ連が侵攻した場合に敵をスパイできるように、一般のアラスカ人に情報の暗号化とその解読法、その他のスパイ技術を訓練することであった。ソ連の侵攻は起きなかったが、合計89人の「エージェント」がこの目的のために訓練されたことが記録に残されている。

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画像は「Wikipedia」より

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