バイク事故で死んだライダーを神格化！愛車がひとりでに事故現場に舞い戻る怪異も＝インド

2023.05.09 11:40 文＝仲田しんじ

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　路上で命を落としたライダーの霊はまだバイクを運転しているのか――。事故現場に戻ってきたバイクが交通安全の“神仏”になった神社があるという。

伝説のライダー「オム・バンナ」のストーリー

　インド・ラージャスターン州をツーリングする機会があればオム・バンナとして知られるライダーに捧げられたユニークな神社に出くわすかもしれない。そこでオム・バンナの霊魂が旅の安全を確かなものにしてくれるという。

バイク事故で死んだライダーを神格化！愛車がひとりでに事故現場に舞い戻る怪異も＝インドの画像1 — 「The Indian Express」の記事より

　ロイヤルエンフィールド・バレットに乗っていたことから“弾丸ババ”（バレットは弾丸の意）としても知られるオム・バンナはラージャスターン州の伝説の人物であり、彼の物語は悲劇、信念、そして奇跡のストーリーである。

　オム・バンナのストーリーは、1988年に起こった悲惨な事故からはじまる。グジャラート州のチョティーラ村出身の青年オム・バンナは、愛車のロイヤルエンフィールド・バレットに乗ってパーリとジョードプルの間の高速道路を走っていたところ、木に激突して死亡した。すぐに事故現場に警察が駆けつけ、現場を検証するとともに事故車を近くの警察署に運んだ。

　その後、奇妙なことが起こった。バイクは不思議なことに警察署の敷地から姿を消し事故現場で見つかったのだ。もちろん見つかったバイクは回収されたのだが、不思議なことにまた次の日には警察署から消えたバイクが事故現場で発見されたのだった。

　地元の人々はこれは奇跡だと理解し、オム・バンナの霊魂がこのバイクに何らかの形で結びついていると確信した。それほどまでにバンナと愛車は一心同体であったというのである。

　彼らは事故現場に小さな祠を建ててその中にバイクを収容した。ここを神社に見立ててオム・バンナと彼の愛車を称え、祈り、供え物を捧げるようになったのである。

　時が経つにつれて、神社の人気が高まり訪れる人も増え、“弾丸ババ神社”として知られるようになった。神社は旅行者や巡礼者にとって魅力的な観光スポットになったのだ。人々はここに来て献花、ココナッツ、酒など、さまざまなアイテムをオム・バンナに奉げて敬い、旅の安全を祈念するのである。

バイク事故で死んだライダーを神格化！愛車がひとりでに事故現場に舞い戻る怪異も＝インドの画像2 — 「The Indian Express」の記事より

“聖地”となった“弾丸ババ神社”

　オム・バンナの伝説はラージャスターン州をはるかに超えて広がっていった。インド中のトラック運転手やオートバイ乗りが長い旅に出る前に、彼の守護を求めて祈りを捧げにやってくる“聖地”となった。

　地元の人々は、オム・バンナの霊魂が自分たちを守っていると信じており、安全な旅は彼のおかげだと考えている。そして実際にバンナの死後、この一帯の交通事故が減っているということだ。

“弾丸ババ神社”にはまた幾多の奇跡のストーリーがあり、付近で交通事故に遭った人々が奇跡的に無傷で助かったケースなどもある。彼らは自分が助かったのはオム・バンナの加護によるものだと考えている。また神社に参拝して病気が治ったという話もあるようだ。

バイク事故で死んだライダーを神格化！愛車がひとりでに事故現場に舞い戻る怪異も＝インドの画像3 — 「Bugged Space」の記事より

　神社のバイクはオム・バンナの霊魂を象徴するだけではなく、超自然的な力があると信じられている。バイクは燃料がなくても自然にエンジンがかかり神社の周りを走り回るといわれていて、一部の信者は夜にオム・バンナの霊魂がバイクに乗っているのを見たとさえ証言している。

　オム・バンナの伝説と“弾丸ババ神社”はインドの文化と伝統のユニークで魅力的な部分でもありそうだ。オム・バンナの霊魂の力を信じるかどうかに関係なく、彼が多くの人々に与えた影響を否定することはできない。ラージャスターン州でドライブしたりツーリングをする機会がもしあればこの“弾丸ババ神社”に立ち寄ってお参りしてみてもよいのだろう。

参考：「Bugged Space」「The Indian Express」ほか