UFO研究の先駆者ドナルド・キーホー概説 ― 懐疑論者から地球外起源説、UFO陰謀論の草分け的存在へ

――「超常現象」分野に深い造詣を持つオカルト研究家・羽仁礼が歴史的UFO事件を深堀りする。

 アーノルド事件から数年の間に、「空飛ぶ円盤」という言葉は、日本社会に着実に根付いていった。

 1949年(昭和24年)12月に刊行された『世界新語辞典』には、「空飛ぶ円盤」という言葉が掲載され、翌年1950年(昭和25年)になると『新聞語辞典1951年版』『現代米語解説活用辞典』『新英和辞典』などにもこの言葉が掲載された。

 天文学の雑誌である『天文と気象』1950年1月号にも、観測中太陽面を横切った謎の飛行物体に関する投稿が掲載されている。これは最終的に虫ではないかと結論されたが、このような投稿が採用された背景には、UFO現象が認知されてきたという社会状況があるだろう。

 1950年には地球外起源説に触れる記事もいくつか現れたが、こうした傾向は、UFOは他の天体から来た知的生命体が作った乗り物であると唱える刊行物がアメリカで相次いで出版されたことと無縁ではあるまい。

 この年アメリカでは、ドナルド・キーホーの『空飛ぶ円盤は実在する』と、フランク・スカリーの『UFOの内幕』が相次いで出版された。いずれも出版時には大きな反響を呼び、今でもUFO研究史上無視できない著作となっている。

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ドナルド・エドワード・キーホー(画像は「Getty Images」より)

 ドナルド・エドワード・キーホー(1897~1988)は、アイオワ州のアタムワに生まれた。1919年にアナポリス海軍士官学校を卒業して職業軍人となり、中尉として海兵隊のパイロットとなる。しかし1922年、グアムで飛行機事故に遭って負傷、翌年除隊し、その後商務省民間航空部門情報責任者となる。他方退役した頃からパルプ雑誌に寄稿しはじめ、ファンタジー雑誌『ウィアード・テイルズ』などにいくつもの作品を掲載した。

 1927年、チャールズ・リンドバーグが大西洋単独無着陸飛行に成功して有名になると、リンドバーグの国内ツアーに同行、翌1928年にツアーの模様を描いた『リンドバーグとの旅』を著して著述家として知られるようになる。その後も数々の航空小説や冒険小説を発表したが、第二次世界大戦が勃発すると少佐として軍務に復帰し、海軍航空訓練隊に勤務した。戦後は再び著述に復帰するが、雑誌『トゥルー』にはさまざまな航空機を自ら操縦してその性能を評論した。

 彼がUFOに関わるようになったのも、この『トゥルー』誌からの依頼がきっかけだった。

 1947年のアーノルド事件以来、UFOの話題は世間を騒がせていたが、パイロットであるキーホーは当初その存在に懐疑的だった。そのキーホーが『トゥルー』編集者ケン・W・パディから連絡を受けたのは、1949年5月だった。キーホーと会ったパディはUFOの正体について、アメリカの秘密兵器かソ連のミサイルという可能性を口にしたが、キーホーはどちらの説にも問題があると感じた。6月には『トゥルー』航空担当編集者ジョン・ドゥバリーを交え、再びパディと話し合ったが、このときキーホーは、UFOは実在しない、ソ連の誘導ミサイル、アメリカの誘導ミサイル、アメリカが秘密兵器を持っているとソ連に思わせるための心理的陽動作戦の4つの可能性を提示したという。ところがパディはこの場で、宇宙から飛来する宇宙人の乗り物ではないかという説を述べた。

 その後キーホーは、元軍人としての人脈を活かして多くの関係者に接触し、経験のある信頼に足る大勢の人物が奇妙な飛行物体を実際に目撃していることを知る。その結果彼が下した結論は、UFOはアメリカやソ連の秘密兵器ではなく宇宙船である。そして空軍はその存在を承知しているにも拘わらず、情報を公開していない、というものであった。

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『空飛ぶ円盤は実在する』(画像は「Wikipedia」より)

 キーホーはこうした内容の記事を『トゥルー』1950年1月号に「空飛ぶ円盤は実在する」と題して掲載した。記事は大きな反響を呼び、その内容を膨らませて6月に出版されたのが、『空飛ぶ円盤は実在する』であった。

 こうしてUFO研究の先駆者の一人となったキーホーは、その後も『外宇宙からの空飛ぶ円盤』(1953年)、『空飛ぶ円盤の陰謀』(1955年)、『空飛ぶ円盤:最高機密』(1960年)と次々に関係書を著し、その多くがベストセラーになった。

 1956年、海軍の物理学者であったトーマス・タウゼント・ブラウンらが民間UFO研究団体「全米空中現象調査委員会(NICAP)」を結成すると、キーホーは翌年1月に会長に選出され、1969年までその職を務めた。キーホーの指揮下でNICAPは、会員1万人以上を擁する、アメリカを代表する研究団体に発展した。

 キーホーはいわゆる地球外起源説、そして政府がUFOに関する情報を隠匿しているというUFO陰謀論の草分け的存在として、UFO研究史にその名を刻まれている。

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文=羽仁礼

一般社団法人潜在科学研究所主任研究員、ASIOS創設会員、 TOCANA上席研究員、ノンフィクション作家、占星術研究家、 中東研究家、元外交官。著書に『図解 UFO (F‐Files No.14)』(新紀元社、桜井 慎太郎名義)、『世界のオカルト遺産 調べてきました』(彩図社、松岡信宏名義)ほか多数。
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