ブックメーカーとオンラインカジノをめぐる事件

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 IR法案に基づく統合型リゾートの推進・設立をめぐり、日本初の合法ランドカジノが2020年代後半の開業を目指す形で準備が進められています。一方、ネット上では、さまざまな人気スポーツに賭けることのできるブックメーカー比較サイトや、オンラインカジノのレビューサイトを見かけることも増えています。

 カジノやスポーツベットは、特に欧米で娯楽として長く親しまれてきましたが、やはりリアルマネーを取り扱うだけに、その安全性への疑問や、犯罪行為が明るみに出ることもあります。この記事では、そんなスポーツブックメーカーやオンラインカジノをめぐる詐欺行為についての国内外事例をいくつか挙げたいと思います。

①ジェイソン・ハディガン

 最初に挙げたいのは、オンラインではなく、実店舗のブックメーカーを相手にした詐欺行為のケースです。イギリスのジェイソン・ハディガンは、全国規模で複数のブックメーカーに対して不正をはたらいた犯行グループの一人として2014年に逮捕されており、イングランドとウェールズの全てのブックメーカーの店舗から出入り禁止になりました。その時の経験を『How And Why I Conned The Bookies(原題:私がブックメーカーを騙した方法と理由)』に著したことでも知られています。

 その5年後の2019年5月、ハディガンはウェールズのアマンフォードという街に車で向かい、出入り禁止となっているはずのブックメーカーの店舗に足を踏み入れます。その日、ハディガンは店舗のスタッフと話をして信頼を得ることでレジスタッフを味方につけ、その後ブックメーカー店舗の仕組みや使われている設備などを知った上で、賭けた試合の結果が出た後のタイミングで、巧妙なテクニックを用いてスリップを入れ替えたとのこと。

 この手口は、2012年~13年の間にハディガンがメンバーだった詐欺グループが、コーンウォール地方の30を超えるブックメーカー店舗で使ったのと同じものでした。ハディガンはこの店舗で1613ポンドの「賞金」を勝ち取ることに成功したものの、店舗には1000ポンドの現金しかなく、翌日に残金を受け取るために戻ってくると言い残してその場を後にし、さらに別のブックメーカーの店舗で1780ポンドを手にしました。裁判所によると、監視カメラの映像と英ブックメーカー協会のメンバーによって身元がバレ、14カ月の懲役を言い渡されたそうです。

②ギャビン・トムソン

 イギリスはブックメーカーの発祥地ということもあり、こういった事件がより多く取り上げられるのも納得が行きますが、次もやはりイギリスで起こった事件です。ギャビン・トムソンは、なんとブックメーカーのスタッフメンバーで、内部から詐欺行為をはたらいたことで、逮捕されました。

 当時27歳だったギャビン・トムソンはスコットランドのダンディー、フォーファーの街で、コーラル・ブックメーカーのスタッフをしていました。彼はイベントの結果が出揃ってからベットをすることができるバグを会社のシステムに発見し、さらに自分の友人たちにお金を渡して、すでに結果を知っているイベントに賭けるように依頼したとのこと。これらの行為は3カ月に満たない期間内で行われており、トムソンは毎回のシフトで1000ポンドほど、合計4万ポンドを超える大金を手に入れました。

 マネージャーのアシスタントとして働いていたトムソンは、2015年の夏にこのバグについて知り、ブックメーカーの顧客や友人たちに、自分のためにベットを行うように依頼したとのこと。トムソンがいた店舗での損害は1万7500ポンドにのぼります。その他にもダンディーの店舗では、試合の結果確定後に55にのぼる賭けがトムソンによって処理されたのが発見され、こちらの損害は2万2800ポンドにのぼります。最終的に彼は2015年10月~2016年1月の間に行われた詐欺行為による2つの罪状により、有罪が確定したとのことです。

③Lock Poker

 3件目は、サイト側による詐欺事件を取り上げます。2013年にLock Pokerによって引き起こされたこの事件は、オンラインポーカーサイトの詐欺関連の記事でしばしば取り上げられる有名な話です。

 アメリカのLock Pokerは、2008年の設立以来米国を含む世界中のプレーヤーにポーカーゲームを提供しており、そのシステムは日本語のギャンブルサイトと同じように、プレーヤーがゲームに参加し、賭け金を預けることができるものでした。

 このLock Pokerは、当時すでにポーカーサイトとしてユーザー数やシステムなどの点で確立されていたCake Poker Networkとパートナーシップを結ぶことで、サイトの拡大を目指していましたが、次第に条件面などから不和が目立つようになり、Lock PokerはCake Pokerから離脱。その後Merge Networkという別のネットワークの下に入りますが、しばらくの後にやはりその関係性にヒビが入り、2013年に離脱することになります。

 これと時を同じくして、Lock Pokerでは資金の出金リクエストの遅延や、ひどい例では正当な理由なく拒否されるといったケースが多数報告されるようになり、サイトでの出金に問題があることが浮き彫りになりました。結局サイトは、ユーザーたちに多くの経済的損失と戸惑いを残したまま2015年に閉鎖となり、オンラインギャンブル業界の信頼性と規制の重要性についての議論を引き起こすことになりました。

④日本の事件

 さて、ここまで海外の事件を取り上げましたが、日本国内も安全地帯とは言えません。2005年に、日本語対応カジノ「ココカジノ」がリニューアルの名目でユーザーのログインをできなくしたところから始まりました。サイトは結局そのまま閉鎖となり、ユーザーはアカウントの残金や勝利金を取り戻すことができないままとなりました。

 さらに2009年に起こった「お台場カジノ」事件もあります。こちらは2006年より日本語で使えるオンラインカジノとして人気を博していました。ところが、2009年末にはシステム障害との名目で不払いを起こし、そのままサイトが閉鎖となって、夜逃げ状態になりました。こちらのユーザーは、結局入金していた金額を取り戻すことはできずに、泣き寝入り状態だったようです。

 この頃は、日本におけるオンラインカジノやオンラインブックメーカーの市場も現在ほど成熟してはおらず、グレーどころか完全に黒というサイトも多く乱立していました。現在ではブックメーカーやオンラインカジノの運営を巡っては、海外諸地域のライセンスを取得することが必須となり、それがある程度質や安全性の担保となっています。

 セキュリティ技術も発達し、オンラインペイメントをめぐる状況は徐々にユーザーが安心して使えるよう変わってきてはいるものの、信頼性をめぐる問題は、オンラインカジノやブックメーカーだけではなく、デジタルスペースでの大きな課題として今後もしばらく存在し続けそうです。

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