「日本一の変態老人」にインタビュー! 奇跡の性器と包茎サークル……

・本記事は2019年の記事の再掲です

記事に登場する包茎のクニオさんが出演した「トカナ」プロデュースのネット番組はコチラ↓

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――日本で最もヤバイ人間を集める元SM誌編集者で地下編集者・福田光睦が取材!

間違いなく「日本一の変態老人」を徹底取材! 奇跡の70歳性器…表の顔は地元の名士、裏の顔は!?の画像1
写真:福田光睦


 クニオさんとは、東京の下町で生まれ育った、御年70歳余のマニア男性のことである。

 一口に《マニア》といっても、なんのマニアと言い切れない、それはそれは懐の広い好事家である。彼と最初に出会ったのは、約15年前。夜通し行なわれていたアングラ系のSMサロンであり、既に大半の老人は眠りについているであろう深い時間であった。

間違いなく「日本一の変態老人」を徹底取材! 奇跡の70歳性器…表の顔は地元の名士、裏の顔は!?の画像2
写真:福田光睦


 そこでクニオさんは《尿道に7メートルのチューブを挿入し、それを若い女性に引き抜かせる》という、十八番の芸を披露していた。

 その逸物は決して怒張するわけでもなく、女の子の戸惑いがちなリアクションとは対照的に淡々としたものだった。

 その間、クニオさんはその甲高い江戸弁を上ずらせることもなく、ニコニコと女の子を誘導しているのだった。

「この人はいったい何が目的なんだろう?」

 この当時――今から十五年ほど前であっても、SM誌編集者という筆者の職業柄、多くのマニアを見てきたが、さすがに一瞥してクニオさんの行動の意味がわからなかった。

 しかも、クニオさんの男性器付近には、見たことがないほど大量のピアス群が、ジャラジャラと付いているのだ。

 “どこから突っ込んでいいかわからない”とはこういう人のことを指すのだろうが、クニオさんはそんな次元よりもっと上手で、戸惑う筆者にむしろ向こうから突っ込んできた。

おたくはこういうの好きなの(笑)? もう少し早く言ってくれれば、もう少しいいもの見せられたのにねぇ

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オオグンカンドリ/Wikipediaより

 そう言って見せられたのが、“グンカンドリのように膨れ上がった男性器”の写真である。

「な、なんですか……これ!?」

「これはね、オチンチンにバイ菌入れたの。そうすっとこうやって膨らむのよ(笑)。おもしろいでしょ?」

 しばし絶句した後に、ようやく質問を繰り出す。

「……ど、どうやってバイ菌入れたんですか?」

「針の先に唾付けて、床の上をゴロゴロってやるのよ。それで刺したらすぐバイ菌入るからさ」

 クニオさんは、筆者が初めて会った“バイ菌で性器を膨らませるマニア”だった。

間違いなく「日本一の変態老人」を徹底取材! 奇跡の70歳性器…表の顔は地元の名士、裏の顔は!?の画像4
画像は、ゲッティイメージより

 この当時、既に身体改造なるものにも同時に接していたこともあり、その安全第一な厳密さとは真逆なクニオさんのベクトルに衝撃を受けたのである。

 多くのというか、ほぼ全ての身体改造の愛好者たちは、衛生面や安全性に留意を払い、それぞれのリスクをマネジメントしながら、自己の身体の理想型を追い求めている。

 実際、いま現在に至っても日本の身体改造シーンにおいてその傾向は強くなっており、これから入ってくる人たちにとっては素晴らしい環境が実現しつつある。

 しかし、その真逆と言おうか、不衛生さに自らの欲望を任せているご老体がいたのである。

 私はこの瞬間、身体改造という行為の半分しか理解していなかったのだという感覚に貫かれた。

 身体改造は過激さを追い求める若者文化ではなく、老人のロマン溢れる《人間賛歌》となって、筆者の頭の中で鳴り響いたのである。

 そして同時に、人間という存在の、かくも素晴らしい業の深さに感じ入ったのだ。

《人間はその体を自由に改造する権利を持っている》

 というのが、一般的な身体改造愛好者の理念とするなら、そしてそれと同等か、それ以上に筆者を揺さぶったのが、

《人間はその愉しみとしてバイ菌に感染してその体を変化させる権利を持っている》

 という、彼なしでは絶対に到達できなかった理論である。

 これを、“常識外の範疇にも常識と非常識が存在する”ということを認識させられた体験として、筆者は《クニオ体験》と呼ぶことにした。

 さて、この時、既に深夜1時は超えていただろう。

 クニオさんは衝撃にうち震える筆者を尻目に、「もう遅いから帰るよ」と告げてきた。

「さすがにご老体か」と安心していたのも束の間、この後の言葉がまた衝撃だった。

「明日は朝の6時から草野球なんだよ。で、グラウンドの申請すんのが面倒くさいからさ、9時からの開始時間の前に集まって試合終えて片付けて帰ろうってことになってんの(笑)」

「……」

「で、そのあとはミニモニ。の横浜のコンサート行かなきゃいけないの。孫が行きたいっていうから最前列の方のチケットとってさ、もう大変だよ(笑)」

「…………」

 深夜の新宿で、そう告げたクニオさんは、颯爽と帰って行った。

 SMから始まってチューブ、性器ピアス、バイ菌、ミニモニ、草野球、孫……。

 世の中にはまだまだ知らないことが多いことは重々承知の上だったが、想像を遙かに上回るというのは、こういうことを指すのだと痛感した。

 

■大物たちをびびらせるクニオさん

 それから、筆者とクニオさんの付き合いは始まった。

 いつ会っても、何を聞いても、とにかく、不思議なスケールのデカさを持った人だった。

・写真家の菅野ケイ氏
 それから何回かライブ会場などで会った後に、まず1号で終わった筆者企画の雑誌『Modern Freaks』でインタビューをすれば、それを見た写真家の菅野ケイ氏がクニオさんの後ろ姿に「ただものではない! 誰ですかこの背中は!?」と見惚れて連絡をしてきた。

松沢呉一氏
 そのあとはM男性として『スナイパーEVE』誌(マゾ男性向け女王様専門誌)でインタビューをすれば、あの饒舌なライター松沢呉一氏をして言葉少なにさせるほど一人で4時間以上喋りまくった

・SM女王様
 さらには筆者がライト層向けの女王様DVDを撮っていたことがあるのだが、その1本にも出演して(『JUN女王様の特殊妄想クリニック』)例のチューブ芸を女王様へのドッキリとして披露してもらえば、その女王様の元に以来5年以上も通い続けている。

 とにかく、不思議な人間力の大きさを感じさせるエピソードには事欠かない人物なのである。

 恐らく彼は、飛び抜けておもしろい人たちばかりに支えられて生きてきた筆者の人生において、最もおもしろい人物の一人であろう。

 ここからは、それらの接触を通して得たクニオさん像を書いていこうと思う。

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