【奇病】2億2千万人に1人の難病…「頭の大きさが2倍になった少年」の生涯
7歳までしか生きられないと宣告された男の子のきわめてレアな症状とは――。それは頭部が2倍に成長してしまう頭蓋骨幹異形成症という奇病だ。
■2億2千万人に1人の難病、頭蓋骨幹異形成症とは?
1961年12月4日、米カリフォルニアで生まれたロイ・L・デニスは何の問題もない健康優良児であったが、2歳の時にきわめてレアな疾患である頭蓋骨幹異形成症(Craniodiaphyseal Dysplasia、CDD)と診断された。
この病気は出生2億2千万人に約1人で発生し、記録されている症例は20人に満たないきわめて稀な疾患である。CDDは頭蓋骨を含む骨組織が過剰に蓄積し、徐々に脳が圧迫されて頭蓋内圧亢進を引き起こす骨疾患である。記録された少数の症例に基づいて医師らは、中枢神経系と脳神経に対する骨の蓄積による圧力が彼の視力と聴力を奪い、最終的には脳に影響を及ぼして重度の精神障害に苦しみ、7歳の誕生日を迎える前に死亡するとの予測が家族に伝えられた。
頭蓋骨の異常な成長によりデニスの顔は著しく歪み、頭の大きさが通常の2倍になった。頭蓋骨への圧力により、両目が頭の端に向かって離れていき、鼻が異常な形に成長し始めたのである。
デニスは子供時代より先は生きられないはずの運命にもかかわらず、彼の母親はそのような前提には立っていなかった。彼女はデニスが6歳のときに学校に入学させ、普通の男の子のように育てたのだ。デニスはクラスの人気者となり、たくさんの友人を得たのだった。
デニスは素晴らしいユーモアのセンスも持っており「もっと普通に見えるように」整形手術を勧められたにもかかわらず、断り続けていた。
医師らはデニスの知能に障害が及ぶことを予測していたが、彼は学校の勉強に遅れることはなかった。母親のラスティさんに言わせれば、彼らはデニスを教室に入れさせたくなかったのではないかと話す。医師らはデニスを学校に通わせると他の子供たちの親に迷惑がかかると考えたのだという。
■想定より9年の延命
ラスティさんはデニスの症状を自然療法で治療し、頭痛が起きたときはいつも「気分を良くしなさい」と言いながら、信念の力による自己治癒の哲学を彼に教えた。
しかし時は残酷にも経過していく。7歳を迎えたデニスの健康状態が悪化していることは否定できず、頭痛は悪化し、体は衰弱していた。ラスティさんはデニスの普段の態度が大きく変わったことにも気づいており、1978年10月4日に16歳で悲劇的な最期を迎えるまで、そう時間はかからなかった。
彼の正式な死因は、突然不整脈死症候群であった。これがCDDと関連しているかどうかはわかっていない。デニスの遺体はUCLAメディカルセンターに寄付されたということだ。
医師の診断を超えて9年間も長生きしたデニスの話は奇跡と言えるだろう。彼の素晴らしい人生は1985年の映画『マスク(Mask)』にインスピレーションを与えた。この映画ではエリック・ストルツがロッキーを演じ、シェールが母親のラスティを演じている。
先行きの見えない社会情勢の中、世界で多くが不安定な暮らしを余儀なくされているが、デニスの人生を振り返れば多くの勇気と気づきが得らえるに違いない。
参考:「Daily Star」ほか
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