犬の「自殺」が繰り返される橋の謎、地元民は悲しむ未亡人の幽霊を非難

 絶対に愛犬を連れて行ってはいけない橋があるという。これまでにも多くの犬が不可解な身投げを遂げている“犬の自殺橋”とは――。

■600匹もの犬が身投げしている“犬の自殺橋”

 ビクトリア朝時代の古い建築物が多く残るイギリスだが、その中には“いわくつき”の物件も少なくない。

 スコットランドのウェスト・ダンバートンシャーの谷に架かった趣のある古い橋は愛犬家が絶対に知っておかねばならない謎に満ちた悲劇の地である。

 ビクトリア朝時代の石橋、オーバートン橋(Overtoun Bridge)は別名“犬の自殺橋”とも呼ばれ、 何らかの理由でこれまでに600匹もの犬が橋の上から身を投げたことが報告されている。

「Daily Star」の記事より

 橋の上から谷底までは約15メートルで、身投げして生き残るケースもあるのだが身体に酷いダメージを受けることは間違いない。記録に残されるようになった1950年代以来、不思議なことに犬がこの橋から転落したり飛び降りたりしたという報告が多数残されているのだ。この橋にやってきた犬たちに何が起きているのか。

 2014年に身投げしたが幸運にも生き残ったのは、キャシーという名前の3歳のスプリンガー・スパニエルである。

 この橋の悪評を知らなかったアリス・トレボロウさんは車で同地にやってきて橋の近くに駐車したのだが、車を降りた愛犬のキャシーはすぐに橋に向かって走っていったという。そして橋の上に来ると頭を回転させて上を見上げながら橋から谷底へとジャンプしたのである。

 驚いてすぐに谷底へ向かったトレボロウさんは、瀕死のキャシーを泣き叫びながら車に運んで手当をしたのだった。橋の上から何か不吉なものを見てキャシーは身投げしたのだとトレボロウさんは話している。

「Daily Star」の記事より

■夫人の幽霊が犬を身投げに促している?

 オーバートン橋で原因不明の「犬の自殺」がなぜ繰り返されるのか。橋の上に来た犬が谷底から響く音に圧倒されて混乱し身投げするのだという説など、さまざまな仮説が語られている。

 橋に通じる屋敷であるオーバートン・ハウスには、1908年に夫が亡くなって一生哀しみに暮れていたオーバートン夫人の幽霊が今も出没するといわれており、彼女の幽霊が犬の身投げに関係しているのではないかと指摘する声もあるようだ。

 この屋敷には白い服を着た女性が歩き回ったり、窓に奇妙な白い人影が映ったりするという話がよく語られていることから、その幽霊がペットたちを魔法にかけ、飛び降りるよう説得していると信じる者もいる。

 オーバートン・ハウスの現在の所有者であるボブ・ヒル氏とメリッサ・ヒル氏は、17年間このハウスに住んでいた中で、何匹かの犬が興奮して橋から落ちるのを目撃したと2019年に話している。

 ボブ・ヒル氏はこの地の野生動物であるミンクやマツテンなどの匂いが犬を興奮させ、その結果犬が橋からジャンプするのだと説明する。

 こうしたこともあり現在橋には、ペットと共に橋を渡る際にはリードを付けておくよう飼い主に警告する標識が設置されている。

「Daily Star」の記事より

 この話題が浮上して以来、ネット上で少なくない“探偵”たちが事件の解明に挑んでいるようだ。

 ある者は「(橋の素材の)花崗岩には石英が含まれている。石英は犬が聴くことができる周波数で振動し、ジャンプを引き起こす可能性がある」と指摘している。

 別の者は「私の仮説は、風が吹くと“犬笛”が鳴るように(橋の)岩が設計されているという説だ」と書き込んでいる。

 またある者は「なぜこれほど多くの犬が橋の側面を飛び越えるのかは分からないが、鳥が橋の高さにいるのを見て、犬は大きな落差があるとは思わず追いかけて橋のフェンスを飛び越える場合があるのではないかと思う」とコメントしている。

 さまざまな説があるが決定的と思える仮説はまだないのかもしれない。いずれにしてもこの話を知った愛犬家はここに犬を連れてこないに越したことはないだろう。

参考:「Daily Star」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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