「三途の川を見に行く方法」対岸に立つ存在の正体とは…時を経て現れた闇の存在【うえまつそうの連載:島流し奇譚】
現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、うえまつそうの新連載「島流し奇譚」。この連載では現役教師ならではの他にはない実話怪談を紹介する。第五回目となる今回は、「三途の川を見に行く方法」にまつわる恐怖体験。
第一回:時空を超えた窓…新築校舎に赴任した教師が見たあり得ないもの
第二回:宮古島のカブ畑 ― サウナで出会ったおじいさんは“最後”だったのか
第三回:『7階の多目的トイレ』異世界とこの世を結ぶ何かが渦巻いているのか…
第四回:夕暮れ時の「目玉の雨」高校教師が語る戦慄の恐怖体験
島というのはどこかしら独特な雰囲気がある場所だ。その島々に古くから伝わる風習や歴史が根付いているからであろう。伊豆諸島もやはり例に漏れず不思議な空気感を纏う島が多く、私の生まれ育った新島でも怪異や心霊現象は島らしい独特な雰囲気のまま今でも語り継がれる。
今日のお話はサチコさんという新島の先輩の体験談である。
いまから37年ほど前、サチコさんが小学生の頃、クラスでささやかれていたのがどうやら「三途の川を見に行く方法がある」との噂だった。
そのやり方というのが独特で
①夢の中で布団から起き上がる
②部屋のドアを開けて廊下に出て家の中のドアというドアを全て開け、最後に玄関のドアを開ける
③開けたドアの先には三途の川が広がっている
というものだった。
「さすがに夢を操るなんて無理だしそんなことできないよねぇ」とみんなで話してたが、人一倍怖がりなサチコさんの脳裏にはその三途の川を見る方法がこびりついてしまい、その日の晩、ついに夢で見てしまった。
夢の中でベッドから起き上がり、体が勝手に部屋から出て行く。家のドアというドアを全て開け、気づいたら玄関のドアノブを掴んでいた。(開けたくない…開けたくない…)そう念じたが夢の中の自分はそのドアを勝手に開けてしまった。
するとそこには綺麗なお花畑が広がっており、目の前を一筋の綺麗な川が流れている。朱色の橋が架かっており向こう岸まで行けそうだったが、それよりも先に川の対岸に立っている人がこっちを見ていることに気がついた。その姿はどう見ても数年前に亡くなったサチコさんのおばあちゃんだったのだ。おばあちゃんはニコニコしながら手を振っていた。おばあちゃん子だったサチコさんは嬉しくて嬉しくて「おばあちゃん?おばあちゃん!」思わず掛け寄ろうとした瞬間……気づいたら夢から覚めて朝になっていた。
本当に三途の川を見る方法だったんだ。朝イチで学校に登校しすぐにクラスメイトにこの事を話したが誰も信じてくれなかった。
その日の夜、そろそろ寝ようかとパジャマに着替えたサチコさんが居間から部屋までの廊下を歩いていると、廊下の右側の庭に面した磨りガラス越しに誰かの影が見える。その影は徐々に近づいて来て、磨りガラスの目の前に立つとコンコンコン…「さっちゃん、大丈夫?さっちゃん?開けて」そのうっすら見えるシルエットも声も、亡くなったおばあちゃんだった。
その日から毎晩、その磨りガラス越しにおばあちゃんは現れた。
コンコンコン…「さっちゃん、大丈夫?さっちゃん、開けて。おばあちゃんよ。開けて」
サチコさんは何か言い知れぬ違和感を感じていて返事もせず窓を開けなかった。
そして数日経ったある日の夜、またおばあちゃんが現れた。
「さっちゃん、大丈夫?さっちゃん、開けて」
そのときサチコさんは初めて返事をした。
「おばあちゃん?ねぇあなたは本当におばあちゃんなの?じゃあなんでさっちゃんって呼ぶの?おばあちゃん生前、サチ、サチって呼んでたのに」
そう言うとおばあちゃんの影、いやおばあちゃんのような影はグッと闇深い空気に変わり優しい声から急に野太い男性の声に変わって「なんだそうだったのかよ」と言い残して去って行った。
月日が経ち、こんな怖い体験もすっかりと忘れてしまった37年後のつい先日。社会人となっていたサチコさんは小学生以来の例の三途の川を見る夢を見た。
夢の中でベッドから起き上がり、部屋から出て行く。家のドアというドアを全て開け、玄関のドアノブをガチャ…っと開けると昔見た夢と同じ綺麗なお花畑が広がり一筋の川が流れていた。
川の対岸にはおばあちゃん…ではなく2メートルはあろうかというベトベトドロドロしたドス黒い人の形をした何かがこちらに手を振っていた。
その姿が怖くて気持ち悪くて思わず飛び起きると、また朝方だった。
その日も仕事場へ出勤し、いつものように夕方帰宅してお風呂に入り夜も更けた。そろそろ寝ようかと居間から自室へと行こうと歩く廊下で思い出した。
「これ昔と一緒だったら磨りガラスごしにおばあちゃんのような誰かが来る…」
そう身構えていたが、結局誰も来なかった。よかった、と安心し寝ようと布団に入った時、今度は家の裏の勝手口を叩く音が聞こえた。
ガンガンガン…「サチ、おいサチ!開けてくれ!サチ!」
その声、勝手口を硬いもので叩く音、10年ほど前に亡くなったおじさんの声といつも杖でドアを叩く音だった。
「サチ!おいサチ?」ガンガンガン…
今でも毎晩毎晩亡くなったおじさんは来るそうだが、また今夜も来るようであればこう言おうと言っていた。
「おじさん、もしあなたが本当におじさんなら、生前サチではなくさっちゃんと呼んでいたよね?」
涙ぐみながらそう私に話してくれた。
一体、サチコさんの家にどうしても入りたがっている者は何者なのだろうか?皆さんも今夜の夢にはどうかお気をつけください。
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