伝説の廃墟「白雲楼ホテル」 誰もいないはずの建物に居住者…着物姿の女霊が…
平成29年1月29日、長崎県平戸市にある(有)旗松亭(資本金3700万円、代表木下隆靖氏、従業員53名)が、長崎地裁佐世保支部へ民事再生法の適用を申請、同日中に保全命令を受けた。
旗松亭は、昭和天皇をはじめとする皇族方が宿泊したこともある由緒ある国際観光ホテルで、平成4年1月期には、年収入高約19億円を計上している。しかし、その後は、修学旅行客などの減少や景気低迷の影響によって一般観光客の減少に歯止めがかからなくなっていた。同ホテルは、現在も営業を続けている。
かつて昭和天皇が利用していたホテルは、国内にいくつもあるが、その中で、最も悲劇的な最期を迎えたホテルがある。それは、石川県金沢市の湯涌温泉にあった白雲楼ホテルだ。同ホテルは、政治家で衆議院議員でもあった桜井兵五郎(明治13年〜昭和26年)が昭和7年に開業したもので、当時は、東洋一の規模を誇っていた。戦後は、GHQ将校の保養施設として使用されたり、昭和天皇・皇后が食事をとったりしたこともあった。このホテルの豪華さは、政治家や有名人などにも知られていて、数多くの名士も利用していた。平成9年には、国の登録有形文化財にも登録されている。
しかし、平成10年に営業を終えると、平成17年から建物を所有していた小倉商事が同年に地元の組合に譲渡することを表明。その頃には、豪華絢爛な様式美に魅了された廃墟マニアがこぞって押し寄せるようになっていた。このホテルの廃墟では、ある廃墟マニアが奇妙な体験をしている。
「大学を出て勤めるようになってから3年くらいのことでした。今からですと、もう10年以上前のことになります。廃墟マニアの友人が『いい廃物件を見つけたんだ!』と言うので行ってみたんです。いゃいゃ、すごかったですねぇ~。館内には、貴賓館『孔雀の間』や特別室『玉渓』、大宴会場『医王』などがあって、どこも豪華絢爛でした。玄関なんかは、吹き抜けになっているんです。もう自分たちは、一生懸命になって写真を撮っていましたね。すばらしい近代建築だったので見所もいっぱいでした。でも、そんなとき突然、『バッシーーン!!』という音がしたんです。ポルターガイスト現象というのでしょうか。しばらくすると、特別室の奥の方から赤っぽい着物を着て、紺色っぽい帯を巻いている若い女性がこっちに向かって歩いて来たんです。髪を結っていて、かんざしなんかもしていたような気がします。まだ、かなり遠かったのでハッキリとは見えませんでしたが、足はないようでした。誰もが驚いたのは、顔や手など肌が露出している部分が青白く光っていたことです。夢か何かを見ているのではないかと思って、みんなしばらく動けなくなってしまいました……。美しいといえば美しかったですね。友だちは、写メを撮ったんですが、その後、誤作動が起こると、その画像は消えてしまいました。しばらくしてから、ケータイも使えなくなったと言っていましたね。一体、このホテルで何があったのでしょうか……」(埼玉県在住の廃墟マニア)
廃墟マニアの間では、北欧や南欧の建築様式と日本のそれを巧みに織り交ぜた外観や内観は、誰が撮っても美しい写真をモノにできるという話が広まり、白雲楼ホテルは、“最上級の物件”とされていた。しかし、この「事件」以来、“曰く付きの物件”というレッテルを貼られるようになっている。
「それから、今思い出せば、もっと不思議なことがありましたね。この物件に入ってからすぐにヘンな部屋を見つけたんです。そこには、まだ布団が敷いてありました。弁当の食べ残しや飲みかけのドリンクも残されていたんです。人が住んでいたんでしょうか……。あんな化け物がいるようなところで生活をしていたら精神的におかしくなっちゃいますよね、普通。建物の中央には、この物件のシンボルとも言えるスペイン瓦葺きの屋根があったりして、すごく良かったんですけど、結局、そのとき以来行くことはありませんでした。もうあんな怖い思いはしたくありませんでしたからね。今から考えてみても不思議で不思議でなりません……」(同)
白雲楼ホテルの本館にある玄関は、アメリカの建築家であるフランク・ロイド・ライト(慶応3年〜昭和34年)によって設計されたもので、建物の内部には、金沢市生まれの画家である相川松瑞(明治27年〜昭和44年)によって大襖絵が描かれた大広間や、石川県生まれの洋画家である宮本三郎(明治38年〜昭和49年)の壁画が描かれたダイニングルームなどがあった。
これほどまでに栄華を極めた白雲楼ホテルだったが、廃墟となってからは、年々荒廃が進んでいった。破壊目的の若者や暴走族などが入り込んで破壊行為をしていくようになったからだ。それに加えて、放火事件が何度も起きている。このようなことから、雪害などの影響によって建物自体も老朽化していたこともあり、最後の所有者となっていた金沢市によって、平成18年に解体されている。
(文:小倉門司太郎)
※当記事は2018年の記事を再編集して掲載しています。
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