『十物語の代償』修学旅行で招いた忌まわしき怨霊の執念【うえまつそうの連載:島流し奇譚】
現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、うえまつそうの新連載「島流し奇譚」。この連載では現役教師ならではの他にはない実話怪談を紹介する。第七回目となる今回は、「修学旅行」にまつわる恐怖体験。
学校の怪談と一言で言ってもたくさんの形がある。定番のトイレや体育館、放課後の話からプールや音楽室などなど。そんな中で比較的よく聞くシチュエーションが「修学旅行」だ。校舎内ではないが、たしかに修学旅行も学校の怪談と定義されるだろう。
今回皆さんにお届けしたいのは、元同僚の英語科のI先生が10年ほど前に修学旅行の引率で沖縄県のとある離島に行ったときのお話。
I先生は現在40代半ばだが、30代のときに赴任した高校で担任を持ったそうだ。そのクラスはとても明るく、まとまりがあって雰囲気も良く担任の仕事もしやすかったという。
そんなクラスでの修学旅行。もちろん引率として行くわけだが、I先生は沖縄自体も初めてだったのでとても刺激的な時間を過ごしていた。海も綺麗で観光するにもとてもよい天気に恵まれ、さらに訪れた離島は様々な深い歴史もある島だった。昼間はゆっくりと島内をまわり、多くのことを学びながら過ごした後、夕方には宿舎の旅館に戻った。
泊まった先はかなり年季の入った、よく言えば老舗の旅館で夜になると少し怖い雰囲気になった。夕飯を終え、お風呂にも入り、生徒たちはあとは寝るだけなのだが、先生たちにはまだ「見回り」という仕事が残っていた。生徒たちがちゃんと寝ているか一部屋ずつまわっていくという見回りの仕事。怖がりなI先生、古い廊下を歩くたびにギィ…ギィ…ときしむ音にいちいちびっくりしながらひととおり見回りを終え、他の先生たちが待機している部屋に戻った。
「次の見回りまであと1時間くらいありますよねぇ、どうしますか?お酒飲むわけにも行かないし…テレビを見てもつまらないし…」
そう言っているとひとりの先生が
「あの…皆さんこれ…」
と、ガサッとおもむろに10本のロウソクを出してきた。コンビニでも買えるいわゆる家庭用ロウソクだったが、なぜいまこれを?と疑問に思っていると
「皆さん百物語って知ってますか?僕怪談好きで…ほら、100本のロウソクに火をつけて部屋の電気を真っ暗にする。1話怖い話をするたびにその人がロウソクの火を吹き消していき順番にそれを繰り返しいて、最後の蝋燭が消えた時に暗闇の中で何かが起きる。まあいわゆる降霊術なんですが、ロウソクは10本、いまここに5人しかいないのでひとり2話ずつ、十物語ということでいかがですか?やりましょうよ。」
特に他にやることもないのでI先生たちは渋々やることにし、思いがけなく先生たちによる十物語が始まった。
ロウソク10本に火をつけ部屋の電気を消す。もうそれだけでこの雰囲気に慣れていない怪談初心者の先生たちの心はゾクッと心細くなる。1人目の先生から話していきロウソクの火をフッ…と吹き消す。2人目、3人目、4人目……、
I先生は5人目に話した。なんとなくテレビで聞いたことのある話を思い出しながら話しロウソクの火を吹き消す。半分が消えたところでさらに部屋は暗く闇が落ち始め、誰も口にはしないが確実に全員が怯え始めていた。
そしてまた1人目に戻り6話目、7話目、8話目、9話目…どんどん暗くなりI先生は自動的に最後の10話目を話すことになった。
闇に包まれ1本のロウソクの火が頼りなく揺れる薄暗い部屋の中、先ほどと同様になんとなく覚えてる話をしてフッ…火を吹き消すとあたりは真っ暗になる。真の闇。さすがに怖くなってみんなで早く電気つけましょうかと電気のスイッチを探そうとしていると、ひとりの女性の先生が
「あの、すいません、わたしもう1話だけ話していいですか?」
「え?いいですけど、いいですけどさすがにもう怖いので手短にお願いしますよ!」
「はい。わかりました。…あの、わたし…ここで死んだんです。フッ…」
もう点いている蝋燭もないのに吹き消す音を聞きながら先生たちはパニックになった。
「え?ちょっと待てちょっと待て!」
電気をパチっと点け、ひとりひとりの顔を指さしながら
「そうだよね?そうだよな?」
この部屋にいる先生たちの中に女性なんてひとりもいなかった。
その晩はみんなで固まって恐怖を押し殺しながら寝たという。
翌日宿のスタッフに聞くと、本来は内緒なのですが…と教えてくれたのだが、どうやら昔この宿でまさに十物語をしたあの部屋で女性客がひとりでロープを使って自ら命を絶ってしまったことがあったそうだ。
そんな体験をしたI先生と2023年の夏に5年ぶりに会って食事をしたのだが、新婚で奥さんを連れてきた。どうやらお腹には子供がいるようで、おめでたいと思いきや……
「いやうえまつ先生聞いてくださいよ。最近ね、奥さんが夜中に寝言でこう言うんです「私…ここで死んだんです。フッ…。私…ここで死んだんです。フッ…。私…ここで死んだんです。フッ…。」って。あのときの十物語の話なんて一度もしていないのにあのときの女の言葉と同じことを話すんですよ寝言で!」
どうやらあのときI先生が十物語で降霊術として降ろしてしまったモノ、最悪の形でいまもついてきてしまっているのかもしれない。
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