電車に乗ると、乗客が一斉に自分を凝視…怪談『終着駅』終電にまつわる本当にあった超怖い話

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 首都圏某所で働いていた男性サラリーマンが体験した話である。

 その日は、仕事でミスをして残業となってしまった。退社が遅くなり終電を逃すまいと急ぎ駅へと向かった。

 何とか終電が来る前に駅ホームへと到着し、乱れた息を整えながらベンチに腰を掛けた。

「間に合って良かった、タクシーで帰るとなると金額が馬鹿にならないからな」と安堵をしながら、すぐに来るであろう電車の到着を待っていた。

 すると、駅のホームへと登る階段の方から男性駅員が自分に視線を向け走って来る。何事かと思いその駅員を見ていると、自分の目の前まで来て「すみません、このホームには電車は来ないんですよ……」と言ってくる。

「ああ、そうなんですね。何番ホームに行けば良いんですかね?」と問うと、「付いて来てください……」と促してくるので言われる通りにした。

「なんだか愛想もないし、雰囲気も暗くて嫌な感じだな……」と思いながらも、その駅員に付いて階段を降り別のホームへと移動する。

 付いて行きながらも何か違和感を感じた。この駅員は走って来たのにも関わらず全く息を切らしていない。そして話し声がまるで機会音声で淡々と話してくるのだ。

 それに普通は、電車の到着ホームが変更されるなら構内放送で知らせたりしないものか? という疑問もあったが、あまりこの駅員と会話をしたく無かったのと、言う事を聞いておいた方がさっさと関わらないで済みそうだと思ったので、素直に従う事にした。

 そう思う程に、この駅員からは何とも言えない不気味さを感じるのだ。
 
 反対側のホームに到着すると、「もうすぐ電車、到着しますよ……」と駅員は言い、来た階段を降りて行く、それと同時に電車がホームへ入って来た。

 その電車は何故か終電にもかかわらず、車内の座席が全て埋まり、吊り革に掴まりながら立つ乗客が居る程に混んでいるのだ。

「なんで終電がここまで混んでるんだよ」と思いながら電車へと乗る。

 何時も終電で帰る時はほとんど客は乗っておらず、座席で横になっても文句も言われない位なのに、車内はラッシュ時と変わらない位の混みっぷりであったのだ。

 訝しげに思いながらも、座れなかった事に不満を抱きつつ空いている吊り革を握ると電車が発進しる。

 するとだ、何故か乗客が一斉に自分を凝視して来るのだ、サラリーマン、OL、学生、老若男女問わず車内の全員が自分を無表情に見てくるのだ。

 それに対して腹を立てて「なに見てんだ!」と怒鳴ってやろうとは一切思えず、ただ恐怖の感情しか湧かなかった。

 そうなると人というのは、一切の身動きもとれず声も出せなくなるものだと痛感する。

 少しでも恐怖を紛らわそうと、自分を凝視する乗客と目を合わせまいと視線を泳がせていると、車内放送が流れてきた。

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「これでアナタも終着駅に行けますね……」

 それは機会音声の様な淡々とした男の声で聞き覚えがあった、その声は駅で会ったあの駅員の声だとそう思った瞬間、段々と意識が遠のいて行った。

 目が閉じていく瞬間、自分を凝視する乗客達が笑って居るのが解った。

 視界が暗くなり、耳に入ってくるガタンゴトンという電車の走行音もフェイドアウトしていった。

 それから、誰かが呼びかける声と体を揺すられる振動で目を覚ました。

 視界に居たのは若い男性駅員だった。

「大丈夫ですか!? 目、覚めました!?」

 慌てた口調で捲し立てる様に声を掛けて来たので、「え? あ、はい……」と自分が返事をすると、「困りますよ! こんな所で寝てもらっちゃ!」と駅員が語気を強めて言う。

 そう言われ自分の状況を確認すると、なんと線路の軌条部分にうなじを乗せ、体は退避スペースに入っているという状態であった。

 眉間にシワを寄せた顔で駅員が「始業前の見回りの際は居られなかったのに、いつ線路に侵入したんですか!? 我々が見つけてなかったら、アナタ轢かれてたかもしれませんよ!」と、怒気をはらんだ口調で言ってくる。

 それを聞き、もし気が付かれる事が無く、この状態で電車が来ていたら……と思うと生きた心地がせずゾッとした。

 ホームへと引き上げられた後、線路内に侵入したという事で警察を呼ばれてしまい、駅事務所にて取り調べを受ける事となった。警官に事情を説明するも全く信じて貰えず、逆に酔っ払ってたんだろうとか、つまらない言い訳をするなと怒られる始末だった。

 前科も無く初犯という事で、逮捕こそされなかったが厳重注意処分となり、その事がすぐ会社に知れ、きつく問責を受ける事になった。

 その後、解雇はされなかったものの、上司や同僚の視線や態度から会社に居づらくなってしまい、結局は退職願を出し田舎へと帰る事にした。

 今は家業の畑仕事をしながらのんびりと生活をし、あの時の事はサラリーマン生活に追われ疲れていた、自分の妄想や幻覚だったのだと思うようにしていると語ってくれた。

 

※当記事は2019年の記事を再編集して掲載しています。

TOCANA編集部

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