終末を告げる「7つの幻」とは…世界を熱狂させた預言者ウィリアム・マリオン・ブランハムの波乱の人生
「神の声を聞く」少年は、いかにして世界を熱狂させる預言者となり、そして異端者として非難されるようになったのかーーー。
貧困と宗教に彩られた幼少期から神の啓示へ
1909年4月6日、ケンタッキー州バークスビルの貧しい家庭に生まれたウィリアム・マリオン・ブランハムは、幼い頃から周囲と違う不思議な感覚を持っていた。3歳の頃には「神の声を聞いた」と言い始め、大人たちを驚かせた。幼いブランハムには、光る物体が部屋の中を飛び回る幻視が見えることもあり、周囲の人々は彼を奇異な目で見ることが多かった。
7歳の時、ブランハムは「人生を神の使命に捧げるように」という声を聞き、自らが神に選ばれた預言者だと確信するようになる。
成長したブランハムは、製材所の仕事や牧場の手伝いをしながら貧しい生活を送っていた。1933年、オハイオ川でバプテスト派の洗礼を受けている最中に、瀕死の経験をする。この時、彼は天使たちに導かれたと主張し、本格的に宗教活動に身を投じることになる。
当初はバプテスト派の説教師として活動していたブランハムだが、後に癒しや預言などの霊的な賜物を重視するペンテコステ派に傾倒し、独自の宗教観を築き上げていった。
終末を告げる「7つの幻」とカリスマ的指導者への道
1933年、ブランハムは主イエス・キリストから「世界の終わりが来る前に7つの大きな出来事が起こる」という啓示を受けたと主張し、その内容を「7つの幻」として発表した。
彼が予言した7つの出来事とは以下の通りである。
■ムッソリーニがエチオピアに侵攻し、エチオピアは彼の足元で滅びるだろう。
■オーストリア出身のアドルフ・ヒトラーがドイツの独裁者となり、世界を戦争に引きずり込むだろう。
ヒトラーは謎めいた最期を迎えるだろう、とも予言している。
■ファシズム、ナチズム、共産主義という3つの大きな主義が現れるが、最初の2つは3つ目に飲み込まれるだろう。
「ロシアに気をつけろ、ロシアに気をつけろ。北の王から目を離すな」という警告も付け加えている。
■第二次世界大戦後、科学が大きく進歩するだろう。
遠隔操作で動くプラスチック製のバブルトップの車が登場するだろう、と具体的に描写している。
■女性を中心とした道徳的問題が深刻化するだろう。
女性の参政権獲得、髪を短くすること、男性の服装をまとうことなどを例に挙げ、女性のモラル低下を嘆いている。
■アメリカで美しくも残酷な女性が台頭し、人々を支配するだろう。
これがローマカトリック教会の台頭であると考えていたようだが、女性による投票の結果、アメリカで大きな権力を握る女性が現れるという解釈も示唆している。
■アメリカ全土で恐ろしい爆発が起こり、瓦礫とクレーター、煙だけが残るだろう。
これらの予言は、後に実際に起きた出来事と符合しているように見えるものもある。しかし、他の予言は実現していないか、曖昧なままであり、ブランハムの信者たちでさえも、その信憑性については疑問視する声がある。
1946年、ブランハムは再び天使の訪問を受け、「世界中で癒しを行うように」と命じられたと主張する。彼は、神から病人を癒し霊を見分ける能力を与えられたと語り、全米各地で癒し集会を開催した。
彼の集会には、奇跡を目撃しようと多くの人々が押し寄せ、失明や麻痺が治ったという報告も相次いだ。ブランハムは熱烈な説教と奇跡的な癒しによって人々を魅了した。
ブランハムは世界中を旅して癒しを行い、その活動は世界的な注目を集めた。彼は多くの信者から「神に遣わされた預言者」として崇められるようになり、カリスマ的な宗教指導者としての地位を確立した。
預言者か異端者か? ブランハムの教えと疑惑、そして悲劇的な最期
しかし、ブランハムは「エバは蛇と性交してカインを産んだ」とする「蛇の種」の教義など、聖書の独自の解釈を主張し、多くのキリスト教指導者から異端者として非難されるようになる。
さらに、1977年に世界が終わると予言するも実現せず、彼の権威は失墜していった。晩年には、癒しの効果を誇張していたのではないかという疑惑や、自己顕示欲が強すぎるという批判も浴びることとなった。
ブランハムはまた、三位一体の教義を否定し、「神は唯一の存在であり、異なる形で現れる」という独自の教義を主張した。この教えもまた、伝統的なキリスト教の教えから逸脱するものとして多くの批判を招いた。
1965年12月24日、ブランハムは交通事故による怪我がもとで、56歳の生涯を閉じた。
ブランハムの死後も彼の信奉者たちは「ブランハム派」と呼ばれる独自の宗派を形成し、世界各地で活動を続けている。彼らはブランハムをキリストの再臨を告げる預言者として崇拝しているが、その教えは多くのキリスト教宗派から異端視されている。
預言者か異端者か、評価の分かれるブランハムが残した言葉は、今もなお多くの人々に影響を与え続けている。
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