5年間の昏睡から目覚めた男性、“39年分の記憶”が消えてしまう

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 39年という期間は、我々が思っているよりも世界を変えたのかもしれないーーー。

 イタリアで驚くべき出来事が起こった。交通事故で5年間昏睡状態にあったルチアーノ・ダダモ氏(63歳)が、突如意識を取り戻したのだ。しかし、彼が目覚めた世界は事故前の記憶とは大きく異なっていた。

39年の記憶が消えた事故

 2019年3月、ダダモ氏は交通事故に遭い昏睡状態に陥った。家族は奇跡を願いながら長い年月を過ごした。そして2024年、ついにダダモ氏は目を覚ました。しかし、彼を待ち受けていたのは、見慣れないテクノロジーと変わり果てた現実だった。

 事故の影響で、ダダモ氏の記憶は1980年で止まってしまっていた。39年分の記憶が消えたのだ。ローマの自宅を出た後、衝撃を感じ、意識を失うまでの記憶しかないという。

 目覚めて最初に受けた衝撃は、鏡に映る自分の姿だった。心の中ではまだ24歳の若者であるはずなのに、そこに映っていたのは見知らぬ老人の顔だった。

 さらに、妻と対面した時の混乱は想像を絶するものであった。彼は19歳の若妻の姿を期待していたが、そこにいたのは、「見知らぬ老婦人」だったのだ。

現代のテクノロジーに戸惑う日々

 ダダモ氏は、目覚めてすぐに母親に電話をかけようとしたが、手渡されたのは見たこともないスマートフォンだった。そして、母親が数年前に亡くなっていたことを知らされ、さらに大きなショックを受ける。

「こんなに長い時間が経っていたなんて、信じられなかった」と、ダダモ氏は当時の心境を語る。

 21世紀のテクノロジーの急速な進歩は、彼を畏怖の念に駆り立てた。GPSナビゲーションを見て、画面にローマの地図が表示され、音声で道案内をしてくれることに驚きを隠せない。

「『100メートル先を右折です』という音声を聞いた時の衝撃は、今でも忘れられない」と、ダダモ氏は振り返る。

画像は「Anomalien.com」より

心は24歳のまま… 祖父としての役割に葛藤

 目覚めて以来、ダダモ氏は、大人よりも子供と接する方が楽だと感じているという。祖父としての役割を受け入れようとはしているものの、心の中では、まだ自分が若者であると感じているのだ。

 ローマのサッカークラブの熱狂的なファンだったダダモ氏は、昏睡状態から目覚めた後、そのクラブのことをすっかり忘れてしまっていたことに気づき、愕然とした。唯一蘇ってきた記憶は、2014年に生まれた初孫のベビーベッドに貼られていたネームタグだった。この小さな記憶の断片が、失われた過去への微かな手がかりとなっている。

 記憶を失っても変わらないもの、変わってしまったもの。5年間の昏睡は、ダダモ氏の人生に大きな変化をもたらした。長い眠りから覚めた彼の人生は、これからどんな物語を紡ぎ出すのだろうか。

参考:lmessaggero.it、ほか

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文=深森慎太郎

人体の神秘や宇宙の謎が好きなライター。未知の領域に踏み込むことで、日常の枠を超えた視点を提供することを目指す。

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