戦争の未来が変わる? 米海軍が高エネルギーレーザー兵器「HELIOS」をテスト
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大海原の上空に、白い閃光が走る。これは自然現象ではない。
米海軍の駆逐艦が発射した高エネルギーレーザーだ。「HELIOS(High-Energy Laser with Integrated Optical Dazzler and Surveillance)」と呼ばれるこの新兵器は、軍事技術の未来を切り開く可能性を秘めている。
光速で迎撃するレーザー兵器
2023年、米海軍は駆逐艦USSプレブル(USS Preble)上でこのレーザー兵器の実戦テストを実施した。国防総省の報告によると、HELIOSは無人航空機(ドローン)を標的とし、精密に迎撃することに成功したという。この兵器の最大の特徴は、従来のミサイル防衛よりもはるかに速く、安価に脅威を無力化できる点にある。
従来の迎撃ミサイルは1発あたり数十万~100万ドル以上のコストがかかる。一方、レーザー兵器は光エネルギーを用いるため、1発のコストはほぼゼロに近い。さらに、HELIOSは標的を熱で破壊するだけでなく、敵のセンサーを妨害(ダズリング)したり、戦場の監視や被害評価を行ったりする多目的システムとして機能する。
ロッキード・マーティン社の先進製品部門副社長リック・コルダロ氏は、「HELIOSは艦艇の防衛能力を向上させ、将来の脅威に対する有効な抑止力となる」と述べている。
レーザー兵器が求められる理由
レーザー兵器の重要性が急速に高まっている背景には、ドローン戦の台頭がある。ウクライナ戦争をはじめとする近年の紛争では、ドローンの大量運用が戦闘の常識を覆しつつある。さらに、紅海やアデン湾では、イラン支援のフーシ派勢力が米海軍の艦船にドローンやミサイルを多数発射する事態が続いており、従来の迎撃ミサイルではコスト面や弾数の制約が問題となっている。
軍事専門誌「Military Times」は、「レーザー兵器の導入は、艦艇のミサイル備蓄を温存しつつ、防衛能力を維持するために不可欠だ」と報じている。ミサイルの生産には莫大な費用と時間がかかるが、レーザー兵器なら理論上、無制限に発射可能である。
もっとも、開発は決して容易ではない。米海軍は年間10億ドルをレーザー兵器の研究開発に投じているが、進展は遅い。最大の課題は、艦艇上での安定した電力供給と、霧や強風といった気象条件下での動作である。
しかし、海軍は2025年の予算でもHELIOSの追加試験を計画しており、今後は巡航ミサイル迎撃への適用も視野に入れている。成功すれば、HELIOSは米海軍の防衛戦略の中核を担う存在となるだろう。
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世界が注目するレーザー兵器の開発競争
レーザー兵器開発は米国だけの取り組みではない。イギリスも「DragonFire」と呼ばれるレーザー兵器を開発し、2024年には航空標的の迎撃に成功したと発表した。英国防大臣グラント・シャップス氏は、「この先端兵器は戦場を根本的に変革する可能性がある」と述べている。
一方、中国もレーザー兵器の開発を加速させている。2024年にはテヘランで中国製のドローン迎撃用レーザーシステムが目撃され、さらに中国の軍事カタログには「シェンノン(Shennong)」と呼ばれる対ドローン用レーザー兵器の存在も確認されている。
このように、各国がレーザー兵器の開発を進める中、HELIOSの成功は軍事戦略の大きな転換点となる可能性がある。今後の試験では、より高度なミサイル迎撃能力が問われることになるだろう。果たしてこの技術は戦場で実用化されるのか、そして戦争のあり方も変わってくるのか。その行方に世界が注目している。
参考:ZME Science、ほか
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